2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

「社員の自主活動」が成功する会社は何が違う? マイクロソフト、セールスフォースを見てきたWHI社CHROが分析(1/3 ページ)

企業内の「健康イベント」と聞くと、退屈なイメージを持つかもしれないが、Works Human Intelligence社の有志社員によるウォーキングイベント「Connected Walking」には半数以上の社員が参加している。このイベントは会社主導ではなく社員のボランティアで行われている。本記事では「社員の自主活動」を成功させるポイントについて、プロジェクトメンバーと人事責任者に話を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

ITmedia デジタル戦略EXPO 2025冬

photo

ビジネスパーソンが“今”知りたいデジタル戦略の最前線を探求します。デジタル経営戦略やAI活用、業務効率化など、多岐にわたるビジネス課題を解決。

【注目の基調講演】企業社員一人一人の"オーナーシップ"と"適所適材"のマネジメントとは

やつづかえり

フリーライター(テーマ:働き方、経営、企業のIT活用など)


 企業内の「健康イベント」と聞くと、退屈なイメージを持つかもしれない。しかしWorks Human Intelligence社(東京都港区、以下:WHI)の有志社員によるウォーキングイベント「Connected Walking」には半数以上の社員が参加している。

 このイベントは会社主導ではなく社員のボランティアで行われている。業務外の活動で全社員の過半数、1000人以上が参加するイベントを運営し、成功させているというのは驚きだ。

 前編の記事では、このイベントを成功に導いた「エンジニア発想」での企画設計について詳しく聞いた。後編の本記事では、「社員の自主活動」を成功させるポイントについて、プロジェクトメンバーと人事責任者に話を聞いた。

参加者が爆増! WHIの“健康イベント”に隠されたエンジニア社員の「2つの発想」とは

企画運営は「有志」で 自主的活動、成功の秘訣は?

 「Connected Walking」を企画運営する社員の有志グループ「Works Healthy Project」(以下、WHP)には約50人のメンバーがいる。そのうち「Connected Walking」に関わっているのは15〜20人ほどで、大きくは「事務局」「プロジェクトマネジメント」「企画」に分かれ、それをさらに細かく分担して運営に当たる。例えば「企画」であれば、イベントの開始前のタスク、実施中のタスク、終了後のタスクなどを洗い出し、それぞれに担当がつく──といった具合だ。

 WHPの代表である発地大地さん(開発部門 グループマネジャー)によると、役割はメンバーの意思を尊重して割り振っている。

 「毎回イベントをやるときにGoogleフォームを用意し、『これくらいの工数を使えそうなので、こういうタスクにアサインしてほしい』といったことを自己表明してもらいます。興味はあるけれどできるかどうか不安という人がいれば、事前に相談してから参加してもらいます。あらかじめ期待値のすり合わせをしてから運営を始めるんです」(発地さん)

 WHPでは、プロジェクトの理念に共感して「やりたい」という社員をメンバーとして迎え入れ、半年に1度「今期はどれくらい活動できそうか」といったことを確認する。「今は参加が難しい」と退会するのも自由だ。あくまで自発的な集まりであり、その点ではサークル活動などに近い。

 だからといって活動が緩いわけではない。プロジェクト全体のミーティングは毎週定期的に実施する。なるべく多くのメンバーが出られるよう、月曜日の開催と水曜日の開催とを交互に繰り返し、それでも出られないメンバーのために議事録を共有している。タスクを持つメンバーには専用のSlackのチャンネルを作って連絡やフォローもする。とても真面目かつシステマチックに運営されているのだ。

 ただ楽しいばかりではない活動に見えるが、「Connected Walking」は4年前から、WHPは前身の会社の時代から10年以上も続く。WHPの副代表の齊藤鉄也さん(BPO部門 コンサルタント)は、メンバーそれぞれに活躍できる場があることが継続のポイントだと考えている。

 「例えば発地さんは、メンバーにミーティングへの参加を呼びかけたり、議事録を書いて出られなかった人へのフォローをしたりといったことをどんどん担ってくれます。それに対して私は、どちらかというと裏で動いて足りないところを補うような感じで、良い役割分担ができているように思います。他のメンバーについても、デザインが必要な部分はその専門性をもった人に、新卒対象のイベントであれば業務で新卒とつながりのある人に、といった形でその人にしかできない役割をお願いしています。いろいろな役割を洗い出して、その人だからできることをお願いすることで、みんなが活躍できる場をそれなりに提供できているんじゃないかと思っています」(齊藤さん)

 発地さんは、活動に対するフィードバック楽しんでやることもモチベーションを維持するコツだと付け加えた。

 「イベントが終わったら運営メンバーでクロージングの会を開き、『こんなうれしい声があったよ』というようなことをきちんと伝えます。それとは別に打ち上げも開催し、CHROなどに来てもらって『とても良かったよ』と言ってもらったり、役職者とおいしいお肉を食べに行ったり──そういうことが大きなモチベーションになっている人もいるので、ねぎらいの機会を作るのはとても大事だと思います」

 「また、僕らが楽しんでいるということも重要です。会社のバリューに『Work fun!』(遊び心で仕事を楽しむ)というものがあるのですが、この活動自体が楽しいし会社を楽しくしていくものでもあるんだ、ということを自分自身が体現できていると、それがメンバーにも伝搬していくんじゃないでしょうか」(発地さん)

仕事とは異なる「手応え」が原動力

 2人の話からは、ポーズとしてではなく心から活動を楽しんでいることが伝わってくる。身近な人から「運動する習慣ができた」「ジムに行くようになった」「健康診断の数値が良くなった」といった声がもらえること、健康な人を増やして会社や社会を元気にしていくという目標に向かっていると感じられることに、大きなやりがいを感じるのだという。

 発地さんは、本業ではできない腕試しをできるというのも楽しいところだと笑う。

 「WHPって、ある意味“実験台”のようなところがあって、『こういうBotを作ったら、参加者からの回答率がこれくらい上がった』といったことがすぐに分かるのがすごく面白いんです。社内の人たちという身近な対象に対して自分が考えた仕組みを提供し、仮説検証できるのも、活動の原動力になっています」(発地さん)

 もともと運動が好きだったという2人だが、自分以外の社員も健康にするということについて最初から強い思いがあったわけではない。先輩に誘われて「楽しそうだから」とWHPの活動をするうちに、社員の健康問題に目が向くようになったのだという。

 「最初はサークル感覚で参加したのですが、WHPの先輩方が忙しかったこともあり、だんだんと自分が主体的に動くようになりました。そうすると、周りの人たちの健康に関する課題や悩みがいろいろ見えるようになったんです。身近な人が休職することもある中で、自分ができることは何かなと、楽しみながら健康に役立つことを考えるのがライフワークになってきました」(発地さん)

 「私は学生時代にラグビーとバスケットボールをしていて運動は好きでしたが、健康についてそこまで真剣に考えたことはありませんでした。WHPの活動がきっかけとなって健康の重要性について考えるようになり、今年は『健康経営アドバイザー』の資格もとりました。そういう意味では、この活動は自分の視座を高める機会にもなっているし、みんなの健康を支えることは“『はたらく』を楽しくする”という会社のミッションにもつながり、ひいては社会を良くすることにもなるんじゃないか、という思いを持つようになりました」(齊藤さん)


WHI社内の有志のグループ「Works Healthy Project」代表の発地大地さん(写真左、開発部門 グループマネジャー)、副代表の齊藤鉄也さん(写真右、BPO部門 コンサルタント)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る