NEC社長に聞く「生成AIとセキュリティの関係」 真のAIエージェントとは?:新春トップインタビュー 〜AI革新企業に問う〜(2/2 ページ)
NECの森田隆之社長に、生成AI競争での同社の強みや、AIエージェントへの見解を聞いた。
森田社長が考える「柱となる技術」とは?
――近未来を見据え、森田社長が考える柱となる技術とは何でしょうか。
やはりAIとセキュリティです。AIはまだまだ黎明期だと思っています。研究所との議論でもよく出るのですが、今のAIは、まだ理論が確立していない状況なのです。NVIDIA(エヌビディア)も、もともとはゲームのチップの会社です。いわゆるプロセッシングを並列処理するためのGPUを手掛け、それが良いということで当たりました。
ただチップ単位でみると、AIチップのベンチャーも現れてきていて、おのおのがAIに最適なアーキテクチャを考えています。今はまだ周辺のツールや環境で、エヌビディアが優れています。だからそこに市場は依存せざるを得ないのですが、時間がたつと、その構造が変わってくる可能性があります。
生成AIの論文のほとんどは「こうやったらこんな優れた結果が出た」というものです。ただ「どうしてそうなったのか」についてはまだ議論ができていません。そこができると圧倒的な効率化や、消費電力などのエネルギー問題も大きく解決する策が出る可能性があります。
もう一つ、大事なのがセキュリティです。あらゆるものがAIによって影響される中で、しっかり守られていかなければなりません。セキュリティといってもサイバーセキュリティだけではなく、フィジカルセキュリティもあります。人のセキュリティもあります。そういう意味での広いセキュリティで守っていくことは、経済安全保障にも関わってきます。
そしてAIがなぜ重要なのか。いろんな生産活動において大きな革命と効率性を実現するからですが、それはデータ主権の問題や文化にも関わってきます。 生成AIサービスは、われわれが知っているローカルなことを聞こうとすると、極めてバイアスの掛かったアウトプットになるケースがあります。やはりその部分については、日本が自分たちのデータ主権や文化を守るために一定のコントロールが必要で、守るべきものは守らなければなりません。
生成AIの技術を全て外から持ってきたものに依存してしまうと、自分たちの大きな運命の重要な部分を依存してしまうことになります。主権や文化を放棄することになります。もちろん全部が自分たちでできるわけではないため、何を自分の意志で守っていくのかを、自ら決められなければなりません。そして、決めたものをバイアスが掛かって実行させられないように、セキュリティを確保することが大事になります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
NEC森田社長に聞く「2025年の投資戦略」 BluStellarとDX人材活用はどうなる?
2025年度は中期経営計画(中計)の最終年度だ。2025年、NECはどのように変わっていくのか。その方針を森田隆之社長に聞いた。
NECは生成AIでどう変わる? トランプ政権誕生の影響は? 森田社長に聞いた
2024年、生成AIは企業の業務ツールへの導入が進んだ。2025年はどう変わるのか。NEC森田隆之社長に、生成AI開発の狙いや、トランプ政権誕生の影響など今後の見通しを聞いた。
NEC社長に聞く「2024年はどんな1年だった?」 キーワードは「ブルーステラ」
2024年はNECにとって、どんな1年だったのか。森田隆之社長に振り返ってもらった。
NEC「ブルーステラ」誕生の舞台裏 コンサル人材を自社で育成する強みとは?
NECが5月、新たなDXブランドとして価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)を立ち上げた。なぜ新たにブランドを設立したのか。その強みは? NECマーケティング&アライアンス推進部門長の帯刀繭子さんに聞いた。
“孫正義流”ChatGPTの使い方とは? 「部下と議論するより面白い」
「部下と議論するより面白い」と株主総会で会場を沸かせた孫正義氏のChatGPTの使い方とは。
孫正義「A2Aの世界が始まる」 数年後のAIは“人が寝ている間に”何をする?
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、個人専用のAIが予定の管理や買い物などを代行する「パーソナルエージェント(PA)時代」が数年以内に到来するとの見方を明らかにした。
NEC森田社長に聞く「生成AIで優位に立てた」理由 NTTやソフトバンクとの協業は?
ECの森田隆之社長は12月12日、アイティメディアなどのグループインタビューに応じ、生成AIを開発する国内企業との協業について「競争するところと協調するところは常に意識しており、そういう(協業する)動きになると思っている」と説明した。
NEC責任者に聞く「生成AIの勝機」 マイクロソフトCEOとの会談で下した決断とは?
「生成AIをブームで終わらせたくない」と意気込むNECの吉崎敏文CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)に開発方針などを聞いた。
松尾豊東大教授が明かす 日本企業が「ChatGPTでDX」すべき理由
松尾豊東大教授が「生成AIの現状と活用可能性」「国内外の動きと日本のAI戦略」について講演した。

