池から「消えた」イモリが…… ECで「絶滅危機種」売買、責任はどこに?(1/2 ページ)
絶滅危機種がECで売買されている。なぜこんなことが起こっているのか? そして責任はどこにあるのか。
ECサイトを見ていて「生き物」が売られていることに驚いたことはないだろうか。Yahoo!ショッピングを見てみよう。珍しい色のカエルやイモリがずらっと並んでいる。
実は、これらECサイトで販売されている野生生物の中に「絶滅危機種」が混じっている。
なぜ、絶滅危機種がこんなところにいるのか。哺乳類・爬虫類・鳥類は実質的に対面販売が義務付けられているが、両生類・魚類・節足動物などは法の対象外ということに加え、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危機種に選定されている4万6300種を超える種のうち、国内法で規制されているのはたったの1264種しかない。
つまり、法的保護の対象となっていない、絶滅の恐れに直面した、両生類・魚類・節足動物などの生きた野生生物がオンラインで購入できてしまうのだ。C2Cプラットフォームでは生体の出品や絶滅危機種の出品規制などがあるが、B2Cでの規制は弱いという。
WWF Japanは2024年12月、楽天市場・Yahoo!ショッピングを対象に実施したスナップショット分析(※)の結果を基に「ペット利用される野生生物のオンライン取引の課題」を発表した。
(※)ある一時点でのオンライン出品の状況を切り取り、どのようなものが出品されていたのかを分析する手法。今回は2024年8月の一時点
多くの人になじみ深いECサイトで絶滅危機種が簡単に売り買いされている。なぜこのような状況になっているのか。絶滅危機種の観点で、ECサイトの功罪を考えていきたい。
池から姿を消したイモリ ECで売られる野生生物は「どこから」来た?
WWFジャパンの柴田有理氏(自然保護室 野生生物グループ プログラムオフィサー)は調査を踏まえ、「スナップショット分析の結果、全体で出品を確認できた種は78種。その中の約4分の1が絶滅危機種もしくは近危急種(※)に該当することが分かりました」と話す。
(※)現時点での絶滅危険度は小さいものの、生息条件の変化によっては絶滅危機に移行する可能性のある種
在来種で見るとどうか。環境省が発表しているレッドリストと照らし合わせたところ、絶滅危機種の販売は確認されなかったが、近危急種は36%が該当した。在来種の販売は全体で11種だったため、数にすると約4種となる。
数字だけを見ると少なく感じるかもしれないが、出品数は全体で174件。そのうち近危急種の割合は64%に上る。レッドリスト未掲載種と比較して多く取引されており、活発な取引によって絶滅危機種に移行するかもしれないという懸念をはらむ。
では、こういったECサイトが販売している野生生物は「どこから」来るのか。
主に「野生から捕獲」「飼育下で繁殖」の2パターンがある。野生から直接捕獲して販売するのか、野生から捕獲した固体や飼育繁殖された個体をさらに繁殖させ、販売する。
スナップショット分析の結果、捕獲が種の存続や生態系全体の脅威となる生き物の出品割合は70%に上ることが分かった。具体的にはどのような事例があるのか。
「奄美大島に生息しているシリケンイモリを例に説明します。イモリは池に大量に生息するのですが、ある日突然1匹もいなくなってしまったという話もあります。では、どこに行ったのか。空港で数百匹単位で持ち出されているのが確認されています」
生息地外に持ち出されたイモリはその後オンラインで販売されているのだという。オンラインでの生体販売の増加が種の存続に危険を及ぼしている可能性があるというのは、レッドリストでも指摘されている。
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