JR西日本の技術を「お売りします」 展示会で見た、監視カメラやバーチャル駅:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
JR西日本が12月5〜6日、JR西日本グループの総合展示会「2024 Innovation & Challenge Day」開催。技術革新と新たな挑戦を掲げ、鉄道会社の枠を越えてさまざまな社会課題を解決しようという試みだ。前編となる今回は、印象に残った展示を通してイノベーションのヒントをお届けする。
- 「バーチャル大阪駅」
気付きを与えてくれた展示は「バーチャル大阪駅」だ。仮想の3D空間で自身のキャラクター「アバター」を操作して、アバター同士で会話ができるほか、空間内に設置されたイベントやライブ配信なども用意している。2024年3月6日にサービスを開始し、2025年3月下旬までオープンしている。
ただ、このバーチャル文化には懐疑的だった。私はゲームライターとしてキャリアをスタートしており、バーチャルワールドとしてはMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイングゲームの略称)をいくつか経験している。しかしメタバースはシナリオのないバーチャルワールドだと思っていて、面白味を感じなかった。コミュニティーならSNSもあるし、アバター作成や移動の操作はむしろ面倒ではないか。面白いゲームはプレイしなくても何らかの形で楽しさが伝わるものだ。
日本のバーチャル空間といえば、かつて広告事業として過剰に投資され大コケした「Second Life(セカンドライフ)」の印象が強い。だから最近のバーチャルワールドは、どうせ広告絡みのコンテンツを見せられるだけだろうと思っている。企業や自治体が参入しているけれども、面白さが伝わってこない。
ところが、出展社のJR西日本コミュニケーションズに話を聞くと、「バーチャル大阪駅は訪日外国人の情報交換の場になっている」という。これは意外だった。日本に関心を持つ外国人同士が情報交換をする場として「バーチャル大阪駅」は適任だと思う。日本の風景の中で、日本を旅しているという気分が盛り上がり、旅の仲間が集う。ああ、なるほどと腑(ふ)に落ちた。
バーチャル大阪駅にはこれまで、延べ2000万人以上がアクセスしており、ユーザーのうちなんと66%が海外在住だという。男女比は女性63%、男性37%、年齢別では18〜24歳が68%となっている。「日本に関心を持つ海外在住の若い女性が、日本の旅への関心と安全性の不安解消を求めてコミュニケーションに参加する」という姿がおぼろげに見えてくる。
ちなみに、「45歳以上」の参加者は6%しかいない。若い世代はむしろ、戦闘や宝探しのほうが面倒で、会話を楽しむメタバースを好んでいるのかもしれない。これは私にとって大きな気付きだった。
バーチャル大阪駅は、スマホ向け国産メタバース「REALITY」で展開している。2025年4月上旬には、進化版の「バーチャル大阪駅 4.u」がスタート。「REALITY」は1500万以上もダウンロードされているスマホ向けメタバースで、世界63の国と地域で展開され、12言語に対応している。日本製アプリが世界に広まっているという話もうれしい。
さらに、3月中旬からは「バーチャル広島駅」も始まる。こちらはスマホだけではなく、PCやVR機器にも対応したメタバース・プラットフォーム「cluster(クラスター)」で展開するという。
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