子育て経験者が語る、育休中「リスキリング」の可能性 家庭のスキルを仕事で生かせるのか
2023年、岸田元首相の「育休中のリスキリング(学び直し)支援」発言が物議をかもした。育児という特殊で多忙な環境下で、リスキリングを実施することは可能なのか……。
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2023年、岸田元首相の「育休中のリスキリング(学び直し)支援」発言が物議を醸した。日本人はただでさえ「学ばない」と言われており、就業者の学びの習慣が低いとされている。育児という特殊で多忙な環境下で、リスキリングを実施することは可能なのか……。
<参考:日本人はなぜこれほどまでに「学ばない」のか 背景にある7つのバイアス>
実際に子育てを経験したことがある人々の意見を聞いてみよう。
子育て経験者が語る 育休中「リスキリング」の可能性
本内容は、学研ホールディングスのグループ会社であるベンド(東京都千代田区)が運営する「スキルアップ研究所」が実施した「子育て経験のある人のリスキリングに関する実態調査」の結果を基に作成している。
全体の6割以上が子育てや家庭運営の経験が、社会で「非常に役立つ」「ある程度役立つ」と回答した。
年齢別に家庭スキルの強みを聞くと、仕事と育児が本格化する時期である30代では、短い時間で成果を出す「作業効率化(時短術)」(22.8%)が最多だった。
40代では「マルチタスク能力」(22.1%)が突出。受験や習い事の送り迎え、親の介護が始まるケースもあり、同時に複数の役割をこなすためにプロジェクト管理やスケジュール調整の力が磨かれやすいと推測できる。60代以上は「作業効率化」「コミュニケーション能力」がともに3割と高い傾向があった。
スキルアップ研究所は「最近では、企業が『家庭で培った調整力・マネジメント力』を成果や評価に反映できるよう、面接や評価面談で確認項目を設定する事例も一部ではじめている。こうした例が広がれば、『家庭スキルをなかなか生かせない』と感じている層のモチベーション向上にもつながり、才能を埋もれさせない環境づくりが可能となるはずだ」とコメントした。
子育て経験者のリスキリングについて、全体の8割が「必要性を感じる」とした。しかしその中で、全ての年代において50%以上が「必要だが行動していない」と回答しており、行動に移すための支援や促進策が求められていることが明らかになった。
スキルアップ研究所は、育児や家事を通じて得られたスキルは決して「ブランク」ではなく、「ビジネスに直結する下地」であると強調する。「この認識を広めるためには、企業の評価制度、国や自治体の支援策、個人の積極的な学び直しが三位一体となる必要がある。また企業側は、家庭での経験をビジネスに生かすための支援と評価制度を整える必要がある」とコメントした。
調査は1月5〜12日、20〜60代の子育て経験のある300人を対象に、インターネットで実施した。
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