「それ効果あるの?」と言わせない! 三田製麺マーケターの“社内を納得させる”施策効果の可視化術:LTV向上は死活問題に(2/3 ページ)
「SNSのフォロワー数は増えているのに、売り上げへの貢献が見えない」「オンライン施策と店舗集客の関係性が分からない」――。多くの広報・マーケティング担当者が、一度は直撃したことがある課題だろう。そんな中、つけ麺チェーン「三田製麺所」を運営するエムピーキッチンホールディングスは、SNSやWebを活用した認知拡大から、コアファンの育成、そして売り上げ貢献までを可視化する独自のロジックを確立した。
マーケティング効果を可視化する3つのステップ
では、広報・マーケティングの成果を可視化するため、三田製麺所は具体的にどのようなロジックで取り組んでいったのか。3つのステップに分けて解説する。
Step1:広報・マーケKPIと売り上げの相関分析
まずPR施策実施時のWebサイトPV数の伸長幅と、店舗売り上げの伸長幅との相関分析をする。
「PR施策実施時に、公式WebサイトのPV数の伸長幅と、店舗売り上げの伸長幅との相関分析を実施したところ、想定以上の相関が見られました。さらに深掘りしていくと、WebサイトのPV数だけではなく、SNSでの拡散量やGoogleマップのインプレッション数など、他の広報マーケKPIと店舗売り上げにも相関が見られることが分かってきました」(堀氏)
Step2:新規認知獲得から初回来店を経て、顧客定着に至るまでの可視化
WebサイトPVと売り上げという単純な指標間の相関性を確認した後、さらなる分析を進めた結果、新たな発見があったという。SNSの伸長タイミングと売り上げの相関性、そしてGoogleマップのインプレッションやアクション数の増加など、複数の指標間の関連性が明らかになってきたのだ。
「これらの分析から、SNSでの認知→Webサイト閲覧→実店舗への来店という、一連のカスタマージャーニーが浮かび上がってきました。実際の数値を深掘りすることで、この流れを可視化できたのです」と堀氏は説明する。
この発見を受けて、顧客の行動を8つのステップに分類。新規認知から購買、そして顧客の定着までの過程を「A1からA4まで、B1からB4まで」の8階層に分けて測定をすることにした。
「各フェーズの数値を記録することで、A1の認知獲得数から始まり、認知から関心へのフェーズ移行し、実際の来店行動への転換まで。さらには、来店後の継続性を経て、B1の顧客定着フェーズまでの流れを把握できるようになりました」(堀氏)
その後の定着度まで測定することで、三田製麺所ではライフタイムバリュー(LTV)を含めた金額換算が可能になった。これにより、これまでは難しいとされてきた、施策の長期的な効果も可視化できるようになったのだ。
Step3:施策による売り上げ貢献額の算出
では、三田製麺所ではどのように広報・マーケティング施策の効果を金額換算しているのだろうか。具体的な算出方法について、堀氏は次のように説明した。
「例えばある施策により、新規のお客さまを月間5000人送客できたとします。年間で計算すると、6万人になりますよね。客単価1000円として計算すると、これが新規認知施策による売り上げ貢献となります」(堀氏)
もちろん、売り上げは新規顧客によるものだけではない。新規で来店した顧客が、その後定着のフェーズに移行し、何度も来店するコアファン化していく。三田製麺所では、AフェーズからBフェーズへ移行する人数を追いかけ、定着率を算出している。その結果、年間何人のコアファンが新たに生まれ、トータルではいくらの施策効果を生むかも、理論上計算できることとなる。
「B4まで到達した方が月間50人いれば、年間600人のコアファンが育成できる。B4到達者の年間利用額を2万円と仮定すると、短期的な売り上げと長期的な売り上げを合わせた施策効果は年間1800万円となります。ここまではっきりとした数値が出せると、広報・マーケティング担当以外の方にも、施策の効果を理解していただきやすいですよね」(堀氏)
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