「それ効果あるの?」と言わせない! 三田製麺マーケターの“社内を納得させる”施策効果の可視化術:LTV向上は死活問題に(3/3 ページ)
「SNSのフォロワー数は増えているのに、売り上げへの貢献が見えない」「オンライン施策と店舗集客の関係性が分からない」――。多くの広報・マーケティング担当者が、一度は直撃したことがある課題だろう。そんな中、つけ麺チェーン「三田製麺所」を運営するエムピーキッチンホールディングスは、SNSやWebを活用した認知拡大から、コアファンの育成、そして売り上げ貢献までを可視化する独自のロジックを確立した。
オンライン・オフライン双方向によるファン育成施策
8段階の顧客育成プロセスを支えるため、三田製麺所では多彩なデジタル施策を展開している。具体的には現在、以下のようなチャネル戦略を実施している。
認知拡大フェーズ(A1〜A2)
- X(旧Twitter):公式アカウントに加え、社長や社員アカウントも活用
- Instagram:商品やブランドの世界観を発信
- TikTok:若年層へのリーチを強化
関心・行動フェーズ(A3〜A4)
- 公式Webサイト:詳細な商品情報や店舗情報を提供
- Google Maps:実店舗への誘導を促進
- グルメサイト:第三者視点での情報提供
コアファン育成フェーズ(B1〜B4)
- ファンミーティング:年2回の対面イベントを開催
- YouTube:定期的なライブ配信で双方向コミュニケーション
- アプリ:来店履歴の管理とロイヤリティープログラムの実施
堀氏は、各チャネルには明確な役割があると話す。「例えば、SNSは認知獲得の入り口として機能し、そこから公式Webサイトやグルメサイトで詳細な情報提供を行う。来店後は、アプリやファンイベントを通じて関係性を構築していく。それぞれのメディアが顧客育成の特定フェーズを担当する形で設計しています」
また三田製麺所では、SNSやWebといったオンライン施策に加え、実際の接点を重視したオフライン施策にも力を入れ始めている。
「これまでに2回、三田製麺所のコアファンを集めたファンミーティングを実施しました。アプリ会員様やSNSを通じて告知したところ、想定の15倍もの応募があったんですよ」と堀氏は手応えを語る。
実際の店舗を使って開催されたファンミーティングでは、以下のような企画を実施した。
- 三田製麺所に関するクイズ大会
- 並盛りの麺量である320gぴったりを盛れるチャレンジ企画
- 三田製麺所オリジナル商品のプレゼント
イベントでは参加者へのインタビューも実施し、コアファンになる顧客の解像度をあげるための取り組みも講じた。
顧客とのリレーション構築に取り組むべき、これだけの理由
三田製麺所がこれほどまでに顧客との関係構築に注力する背景には、将来を見据えた危機感がある。堀氏は「2050年には、東京以外の全ての都道府県で、人口が2020年比で減少に転じる見込み」と、厳しい状況を語る。
「私たちがやるべきことは、お客さま1人が年間、そして生涯を通じて三田製麺所のつけ麺を食べてくださる回数を増やすこと。顧客一人あたりのLTVの多寡が問われる時代が、近い将来訪れます」
「それを実現するためには、三田製麺所というブランドを、とにかく愛していただく必要があります。つまり、将来を見据えれば見据えるほど、ファンマーケティングは欠かせない施策なのです」(堀氏)
社内理解を得るためには、マーケティング・広報の活動効果を"自分たち以外"にも理解しやすい形で可視化することが重要だ。施策の必要性をロジカルに説明できる状態を整えることで、部門を超えた理解と協力を得られる。「広報・マーケティングの成果が理解されないと嘆くのではなく、理解してもらうために私たちが歩み寄る必要があります」と堀氏は強調する。
「例えばPV数が伸びた、SNSのフォロワーが増えたといった報告だけでは、業績が伴っていないと経営層から『何を言っているんだ』と思われて当然ですよね。大切なのは、これらの指標と業績がどうつながっているのか、その相関関係をしっかりと可視化することです。その点に気付ければ、『伝える』プロの広報・マーケティング担当の皆さんなら、きっとできるはずですよ」(堀氏)
エムピーキッチンホールディングスの取り組みは、広報・マーケティング部門が抱える「効果測定」という永遠の課題に対する、一つの解答を示している。それは、自分たちの価値を「他者にも分かりやすく伝える」という、広報・マーケティングの原点に立ち返ることにもなるだろう。
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