「客の言いなり」になっていないか トップ営業とダメな営業、何が違うのか(2/2 ページ)
お客さまがこう言ってたんで――。こんな言葉が口癖になっている営業はいないだろうか? まるで「顧客の言いなり」状態。無理な要求を受けたり、値下げをしすぎたり、社内の状況を考えずにオプションを付けまくったり……。これでは「またあの人が変な案件を持ってきたよ」と社内から反感を買うことになり、部門間の溝は深まってしまうだろう。
顧客を握る力を身に付ける2つの方法 議事録は「1万字以上」書け
この問題の解決策は、営業がリーダーシップを取ることだ。筆者は『実践カスタマーサクセス』(日経BP)という、契約後の行程に関するノウハウの書籍を執筆したが、取引成功の秘訣は契約する前の営業段階からの握りが大きいと解釈している。
まず、そもそも営業が商談の中で、進行シナリオをアジェンダとして整理し、商談の1時間の進め方をリードするべきである。筆者が懇意にしていただいている『とにかく可視化』(新潮新書)の著者の菊池明光さんは、「眼前可視化」といって、顧客にアジェンダを目の前で見せて、その場で議事録を書くスタイルを推奨している。
例えば、商談前の段階で、顧客の課題について仮説として考えているものをアジェンダの中に入れ込む。そして、実際どうなのか、仮説通りなのか、仮説は間違っているのか……といった内容は、顧客にヒアリングし、目の前で聞いた話をメモに取る。
つまり、ヒアリング内容は必ずその場で文字に起こし、顧客と整理しながら共通認識を作っていく。
そうして一つ一つ論点を顧客と握って価値貢献していく姿勢で営業活動に取り組めば、社内の関係者への引き継ぎ力も高まっていく。
弊社が展開するデジタルセールスルーム「openpage」のデータを見ると、受注案件の議事録の文字量は1万〜2万字を優に超えている。顧客は何で悩み、どんな取り組みを期待し、営業としてどう提案をしたのか。具体的にどのようなステップやマイルストーンで取り組み、どんな効果を上げ、最終的にどれほどのROIを目指すのか――。これらのデータが全て入った議事録があれば、社内への説明の解像度は飛躍的に上がる。
営業の価値とはカタログにはない顧客とのインタラクティブなコミュニケーションにある。トップ営業は、顧客と細かい論点を握りながら議事録を残し、顧客と共通認識をすり合わせているわけだ。
カタログ営業禁止 「人」としての介在価値を高める
この認識合わせを、顧客の課題、取り組みへの期待やニーズ、自社が推奨する提案、その提案によって実現できるROI、取り組んだ場合のステップ、参照できる過去の成功事例など、営業で握るべきさまざまな論点で一歩ずつ進めていこう。
細かい項目まで顧客と目線を合わせてしっかり握っていく。この営業スタイルでは常に頭はフル回転である。顧客にどんな価値を提供するか、どうこの提案によって本当に効果を出していくか。単に製品カタログに書いてることではなく、+αの話を握っていくからだ。
単にカタログを読み上げるだけの営業は、今の時代AIでもできる。顧客とインタラクティブに会話し、その時の顧客の文脈にそって提案を作り、顧客と認識を合わせ、合意形成を図っていくことに、営業の人としての介在価値があるのだ。
グローバルのビジネスのシーンでは、よく「On the same page」という英語表現が出てくる。みんなが賛成している、共通認識が取れているという意味だ。みんなが同じページを見て意見が一致している状態が語源である。
日本のビジネスシーンでは「解像度」という言葉が流行だが、どれだけ言語化して顧客と握ってるのか、共通認識を持てているかが、解像度の高い営業といえるだろう。
御社の営業組織の解像度はどうだろうか? 顧客や社内と共通認識は取れているだろうか。
顧客や社内を握るには言語化による擦り合わせは欠かせない。まずは日頃の打ち合わせのメモをしっかり取ること、それを共有して共通認識を作ることから始めてみてほしい。
筆者プロフィール:藤島 誓也 株式会社openpage代表取締役
2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
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