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“USJ流”は通用しないし、やらない――ジャングリア沖縄、運営会社の挑戦(3/3 ページ)

世界自然遺産「やんばる」の大自然を舞台に、新テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA」が誕生する。仕掛け人の一人、加藤健史CEOが描く未来とは。

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地元の学生から「最初の働き場所」にしたいという声も

 ジャングリア沖縄の運営には約1300人の正社員と、合わせて1500人規模のスタッフが必要となる。加藤氏が採用において最も重視するのは「大義への賛同」だという。

 「まずはこの大義に賛同しているかどうかがすごく重要なポイントです。今のステージをしっかり理解して、やるべき目的に合意できるか、それがチームの組成にとって不可欠なのです」。経験の有無は問わず、経験者のもとで成長できる環境づくりを重視している。

 現在、契約社員やアルバイトの応募者の中には、沖縄出身の若者が多いという。「親御さんが『あそこに行ってみなさい』と勧めてくださったり、高校を卒業して就職を希望する方もいます。自分の最初の働く場所としてジャングリアを選んでくれている」と加藤氏は手応えを語る。

 7月25日の開業に向け、トレーニングは5月から本格的に開始する予定だ。「パークができてからトレーニングするのは鉄則」としながらも、一部のスタッフは既に先行してトレーニングを受けている。「この先行組が今度は教える側になり、より多くのスタッフを育成していく」という段階的な育成計画だ。

 給与面でも、地域の相場に安易に合わせるのではなく、本土と遜色ない水準を目指す。「人材には、しっかりと還元していく。単純な時給アップではなく、目的達成度や成果に応じた評価制度を整備し、従業員と会社が共に成長できる好循環を作っていきたい」と加藤氏は意気込む。

データに基づく“二重価格制”

 ジャングリア沖縄は、国内在住者向けの料金(大人6300円)と一般料金(同8000円)という2つの価格を設定する。観光施設の料金設定として、こうしたいわゆる“二重価格制”は議論されてきたものの、実行した前例は少ない。

 「市場に受け入れられるか、さまざまな議論を呼ぶ可能性は認識していました」と加藤氏は振り返る。しかし、「体験価値の評価は、主観的な判断ではなく、徹底的な市場調査に基づいて決定すべきだと考えました」と力強く述べた。

 各国の価格に対する感応度を調査した結果、同じコンセプトでも受け止め方は大きく異なることが判明したという。まずグローバルでの展開を見据えた標準価格を決め、そのうえで国内市場の購買力も分析し、それぞれの地域特性に合わせた価格設定が最適な選択だという結論に至った。

USJのDNAを越えて、世界へ

 USJでの経験が生きているのだろうか。「それは全く違います」と加藤氏は明確に否定する。「USJ流という考え方ではなく、作るものがそもそも違いますので、何も転用できないのです」。むしろ株式会社刀での新規事業の立ち上げ経験を生かしながら、ジャングリアならではの手法を追求している。

 海外展開の構想も独自の視点だ。「まず重要なのはブランドを強くすること。そして十分な土地の確保、資金調達力、地元の協力――この4つの要素がそろって初めて、次のステップに進めるのです」と加藤氏は語る。

 「例えば、インドネシアにはインドネシアの谷と山があります。私たちはハードを複製するのではなく、その土地固有の魅力を消費者価値に変えていく。同じものは作れないからこそ、どこに行ってもそこにしかないものが作れます」。加藤氏が見据える未来は、既存のテーマパークの枠を越えた、新しい価値創造の物語だ。

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