“USJ流”は通用しないし、やらない――ジャングリア沖縄、運営会社の挑戦(2/3 ページ)
世界自然遺産「やんばる」の大自然を舞台に、新テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA」が誕生する。仕掛け人の一人、加藤健史CEOが描く未来とは。
紆余曲折を経て実現した悲願
加藤氏はUSJの開業から携わり、アトラクションの運営や飲食・物販事業、経営企画など、パーク運営の幅広い経験を積んできた人物。2010年にUSJに参画した森岡氏とともに、経営とオペレーションの両面から同パークのV字回復に貢献してきた。
2014年には沖縄進出の構想が表面化。那覇空港第2滑走路の建設決定を追い風に、本格的な検討が進められた。しかし2016年、親会社の方針転換により計画は白紙に。だが、加藤氏と森岡氏の沖縄への思いは消えることはなかった。
2017年、森岡氏が株式会社刀を設立。加藤氏も参画し、2018年にはジャパンエンターテイメントを立ち上げる。沖縄の持つ可能性、そしてテーマパーク事業を通じた地域活性化への確信は、地元企業の共感を呼び、大規模な資金調達へとつながっていった。
「沖縄から日本の未来を作る」という大義
こうして長年温められてきた構想は、今、ついに実現の時を迎えようとしている。2025年1月28日の記者会見を終えた直後、加藤氏は当時を振り返った。
「2012年の夏、沖縄への出張を指示されたことから、この物語は始まっているんです」。記者会見直後の弊誌のインタビューで、加藤氏は当時を振り返った。沖縄進出のきっかけは、地元金融機関から「テーマパークを作るとしたらどんなことができるだろう」という意見交換の依頼を受けたことだったという。
当時、沖縄の観光客数は600万人まで落ち込んでいたものの、加藤氏は着実な成長を確信していた。その後の紆余曲折を経て、現在の土地に出会う。「今のジャングリアは、まずこの土地が決まって、そこでの体験価値をどう表すかというところからコンセプトを作っています」(加藤氏)
そして2018年の会社設立から約5年、360億円を超える資金調達に成功。「この事業がここまで支えられているのは、この事業に関与している人が、全員かなえたい目的をど真ん中にセットしたからです」と加藤氏は語る。その目的とは「沖縄から日本の未来を作る」という大義である。これに賛同した地元企業の出資が7割を超え、計画に共感した人材が県内外から集まった。
「あらゆる意思決定は全てこの大義に基づいてなされている」と加藤氏。さまざまな局面で困難に直面しても、必ず道は開けてきたという。「一つの企業の利益追求ではなく、皆が共感できる大義があるからこそ」と、自信を持って語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
森岡毅氏「本能に刺さるものを」 ジャングリア沖縄の概要公開、コンセプトに込めた狙いは
「JUNGLIA OKINAWA」の開業予定日が2025年7月25日に決定した。仕掛け人、森岡毅氏の悲願となる同施設。どのようなコンセプトなのか。
千葉のキッザニアっぽい施設「カンドゥー」 存続の危機から一転、過去最高の来場者数に どう立て直した?
幕張豊砂駅を出てすぐに、キッザニアによく似たパーク「カンドゥー」はある。慢性的な赤字体質を抜け出せたのはなぜか?
「オーバーツーリズムは“悪化”している」 星野リゾート社長が感じた危機感
スラムダンクの“聖地”は今――インバウンド殺到も、鎌倉市が素直に喜べないワケ
江ノ島電鉄(通称:江ノ電)のとある踏切は、アニメ版『SLAM DUNK』に登場する有名な「聖地巡礼」スポットだ。現在上映中の『THE FIRST SLAM DUNK』の人気で、世の中ではにわかに「SLAM DUNK熱」が再燃している。インバウンド需要も戻ってきている中、あの聖地は今どうなっているのか。現地へ向かった。
人口815人の村を「AR貞子」が救う? 奈良県・下北山村がだいぶ思い切ったコラボを決めたワケ
奈良県、下北山村が「貞子」とコラボした企画が盛り上がっている。ARをつかった観光アプリを開発し、貞子が村内の名所から出現するという企画だ。下北山村はなぜ貞子とのコラボを決めたのか、担当者に聞いた。




