猛毒、性、暗闇……サンシャイン水族館の「トガり企画」に潜む生存戦略(3/4 ページ)
高層フロアに位置し、海に隣接もしていない。そんな民営水族館の「生存戦略」とは。
生き物と距離が近い、飼育スタッフが中心となって企画
サンシャイン水族館では、これまでいくつもの特別展を実施してきた。きっかけは、会場である「ゲストルーム」の有効活用だったという。サンシャインエンタプライズの先山広輝さん(アクアゲストコミュニケーション部 課長)は、次のように話す。
「当館は、民営の水族館ですので自ら収入を生み出し、運営する必要があります。そこで、スペースを有効活用しつつ、季節ごとに面白い企画を実施できればという思いで始めました」
現在は半年ほどの比較的長期スパンで開催することの多い特別展だが、以前は春・夏・秋冬といった形で、年に3回実施していたこともあるという。しかし、開催を経るうちに企画や設営に関するコストと収益の見極めが進み、現在のような長期開催が基本となっていった。
過去に実施した特別展示のうち、最も会期中の来場者が多かったのは「もうどく展」シリーズ。最大で20万人規模の動員があったという。真夜中のいきもの展では具体的な来場者目標を出していないが、同規模の来場者を期待している。
毒や暗闇、さらには性をテーマにするなど、サンシャイン水族館の特別展はとがった企画が多い。これらは先山さんが所属するアクアゲストコミュニケーション部の、飼育スタッフたちが中心となりつつ、他の部署も巻き込みながら企画している。同部はもともと「展示部」として飼育スタッフが所属していた組織だが「良くも悪くも閉鎖的だった」(先山さん)文化を変えるべく、関連する部署を吸収しながら大きくなっていった経緯を持つ。
「特別展の企画は飼育スタッフが中心ですが、どうしても生き物と距離が近い『プロ』の視点で考えがちな点が課題です。私たちにとって当たり前でも、一般スタッフやお客さまからすれば『面白い!』と感じることが多々あるので、各所の意見を取り入れつつ企画しています」(先山さん)
さまざまなテーマを展開する特別展は、ライト層の開拓に効果を発揮している。
サンシャイン水族館は一般的な水族館と異なり、高層に位置する。そのため、空間設計や生き物の搬出入などで制約も大きい。一方で、位置する池袋やサンシャインシティは集客力が高いエリア・施設だ。
そこで、特別展示では「単純明快で、伝わりやすいテーマ」であること、かつ興味をひく、インパクト性を重視している。生き物や水族館に興味が薄い人でも気になるような企画を心掛けることで、同エリアや施設に別の目的で来た人を振り向かせる狙いがある。その結果、常設展は見ずに特別展示だけ見る来場者は、多いときで全体の20%ほどにも達するという。
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