2015年7月27日以前の記事
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EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。

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EVは「計画的な旅」を楽しむ人向けのクルマ

 EVはガソリン車とは異なり、燃料さえ給油すればずっと走り続けられるクルマではない。いや、厳密に言えばEVも充電さえすればずっと走り続けられるが、その充電には最低でも30分以上かかるし、充電器にたどり着けても必ずしも充電できるとは限らない。

 どういうことかというと、EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)で使われる急速充電器は、10年程度でメンテナンスの必要が生じ、採算性の低い充電器は故障すれば放置され、やがては撤去されるという状況が続いているからだ。

 加えて、充電器を他のEVオーナーが使用中という可能性もある。困るのは、充電が終わっているのにEVを移動しようとせず、自分の用事を済ませてからのんびりとクルマに戻るオーナーもいることだ。自分が充電できればいい、次に利用するユーザーのことを想像できないEVユーザーが、利便性をさらに低下させる。

 したがって、EVで長距離移動するには、綿密な計画を必要としながらも、その計画通りにいかないことも覚悟する必要があるのだ。これがどれほどのストレスか理解できなければ、EVを開発・販売するメーカーは成功が難しいのではないか。


レクサスがEVオーナーのために展開しているサービス「LEXUS Electrified Program」では、ホテルやシティビルなどに設置した急速充電器を予約利用できる。まだ数拠点だが2030年までに100拠点の展開を目指している。こうした施設が増えればEVの利便性も高まりそうだ(画像提供:トヨタ自動車)

 筆者はそもそも計画性のない旅が好きで、クルマを利用している。出発の予定時刻も適当で、その時間に出発できたことはほとんどない。それでも旅を楽しめるのは、クルマという自由度の高いモビリティを愛用しているからだ。

 これが、鉄道や航空機による移動がメインとなれば途端に、時間の縛りがシビアになる。

 自宅で満充電まで蓄え、途中の経路充電で食事や休憩を楽しみ、目的地を目指すというプランを立て、それを実行するのは、鉄道や航空機による旅行に近い部分がある。いや、その場合でもメインの移動手段以外は自由度がある。EVの方が自由度は低そうだ。

 しかも、先に充電器を利用している人がいてすぐに充電できなかったり、充電器が故障中で利用できなかったりするハプニングがあれば、たちまち計画は狂い出す。そうしたハプニングすら楽しめるおおらかな人なら、EVでの長距離移動も向いているが、そんな人はそもそもEVを選ばず、燃費も気にせずガソリン車での移動を楽しんでいるケースが多い。

 大容量のバッテリーパックを搭載した大型車であれば、急速充電器を求めてルートをたどるような旅をする必要はないのだろうが、それだけ車両は高額になる。しかも、数年後にはその価値が大幅に低下してしまうのだ。

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