コールセンターはどう進化する? AI時代にオペレーターに求められるスキルとは:「音声×AI」が変えるビジネスの未来(1/3 ページ)
今回は、企業がAIを活用してカスハラ対策を進める上でのポイントを整理し、未来のコールセンターの在り方について考察します。
連載:「音声×AI」が変えるビジネスの未来
ビジネスシーンでAI活用が広がっている。AIに学習させられるデータは、テキストや画像だけではない。実は有効活用できるにもかかわらず、多くの企業が気付いていない宝の山、それが「音声データ」だ。「音声×AI」を軸としたサービスを展開するRevComm(東京都渋谷区)の中村有輝士氏が、音声AIを活用したコールセンターのカスハラ対策について解説する。
前回の記事では、コールセンターにおけるカスタマー・ハラスメント(カスハラ)対策として、クレーム分析の手法やAIの活用方法を事例も交えながら解説しました。
今回は、企業がAIを活用してカスハラ対策を進める上でのポイントを整理し、未来のコールセンターの在り方について考察します。
著者プロフィール:中村 有輝士(なかむら・ゆきのり)
BPOコールセンターに10年間勤務。オペレーター、スーパーバイザー、マネージャー、営業など一通りの業務を経験。
その後、外資の証券会社で、日本にある営業部門とシンガポールにあるカスタマー部門をマネジメント。
2020年7月よりRevCommに参画し、カスタマーサクセスのマネージャーを経て、コールセンター向けプロダクト「MiiTel Call Center」のプロダクトマーケティングマネージャーを担当。福岡県在住。
カスハラ対策にAIを導入する際のポイント
企業がAIを活用したカスハラ対策を進めるには、個人情報保護、運用フローの整備、リスク管理の3つの要素を徹底することが重要です。
個人情報保護の重要性
AIを活用する際には、個人情報の漏洩(ろうえい)を防ぐ対策が不可欠です。
例えば電話対応の一部をボイスボットに置き換える場合、個人情報の取得方法や管理体制を適切に設計する必要があります。また、近年問題視されているのが「なりすまし」です。顧客情報を不正に取得し、第三者が本人になりすまして問い合わせを行うケースが増えています。このようなリスクを防ぐため、音声認証や生体認証などの技術を活用し、本人確認を強化することが求められます。
最新のセキュリティ技術を活用し、法律に準拠した保護体制を整えることが求められます。
運用フローの整備
AIを導入する際は、現状の運用フローの一部をAIに置き換えるという考えではなく、運用フロー全体を見直し、AIをどのように運用フローに組み込むかが大切です。
例えば、飲食店の電話予約にAIボイスボットの自動対応を導入する場合、予約管理の方法やネット予約との連携など、全体の運用フローの見直しが発生します。従業員がスムーズにシステムを使用できるようにマニュアルを作成し、必要なトレーニングを行います。
また、運用開始後も継続的なフィードバックを収集し改善を進めることでシステムの定着を促します。
リスク管理の徹底
AIシステム導入時には、発生し得るリスクを事前に想定し、適切な管理体制を整える必要があります。定期的な監査やシステムの見直しを行い、問題を早期に発見・対処できる仕組みを導入します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「AIによるクレーム分析」で従業員を守れ カスハラ対策、企業が打つべき手は?
企業はテクノロジーを活用して、いかにカスハラ対策を講じていけばよいのでしょうか。本連載では、カスハラの基礎知識から、最前線のAI技術を活用した対策まで詳しく紹介していきます。
営業パーソンの「口グセ」をAIで可視化 インサイドセールスにおける音声データ活用法
今回は、音声×AIを活用したデータ分析が営業活動にどのような影響を与えるのかを、インサイドセールス(電話・メール・チャットなどを活用した内勤営業)を例に紹介。「話し方」「話す内容」「行動」の最適化を具体的に掘り下げていく。
「音声データ」は営業をどう変える? インサイドセールスと親和性が高いワケ
商談や電話などの口頭でのやりとりは大半が記録として残されていないため、「会話のブラックボックス問題」が生じる。AIを活用することで会話を解析・可視化して、営業活動にどのような変革をもたらすのかを解説する。
社内に眠る「音声データ」を収益源に AI時代に求められる「データ蓄積」の仕組みづくりとは?
AI時代に音声データを収集、蓄積、分析、共有する仕組みを構築することは、企業にとって競争優位を築くチャンスとなる。今回は、音声データの蓄積と、従業員の意識改革を進めるための具体策について解説する。
AI時代に「音声データ」が持つ価値とは? コミュニケーションを”資産化”する方法
音声データは比較的容易に収集できるうえ、話者のパーソナリティやニュアンス、緊急度など、多くの貴重な情報を含む。AIを掛け合わせることで、ビジネスに大きな変革をもたらす可能性がある。

