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障害者雇用「3%超」の先進企業、マネフォが求職者面接で必ず聞く質問とは?(2/2 ページ)

2024年4月、障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられたが、それを達成している民間企業は46.0%と半数を割る。本記事では、障害者雇用での採用が社員全体の3.08%を誇る“先進企業”、マネーフォワード社の取り組みを紹介する。

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希望があれば「異動」も 社内の理解を得るための工夫

 メンバーの活躍には、他部署の社員の理解も重要だ。

 「社内のさまざまな部署の仕事を私たちにアウトソーシングしてもらうのですが、その際、できるメンバーには相手の部署の担当者と直接やりとりしてもらいます。そうやって一緒に働く機会が増えることで、社内の理解にもつながっていくと考えています」

 「また、本人の希望があれば、他の部署への異動も支援します。まずはその方の特性と、その部署で求められていることをマッチングした上で、『テスト配属』という形でお試しの期間を経てから異動するんです。こういった形で、活躍できる幅を広げていくということにも取り組んでいます」(井口さん)

 キャリアアップの道は部署異動だけではなく、ビジネスサポート本部の中でリーダー職に登用されて働いているメンバーもいる。また、有期雇用の準社員か無期雇用の正社員か、適用される人事制度を「インクルーシブコース」か一般の社員と同じコースか、本人の希望するキャリアパスや働き方に合わせて切り替えることも可能となっている。

 石井さんは、全員の希望を100%かなえる制度を作ることは難しいものの、一人一人の意思を尊重しながらそれぞれに活躍してもらえる環境をいかに作るか、人事の担当者とも連携しながら制度設計を進めていると語る。

 なお、現在ビジネスサポート本部で請け負っている仕事は、郵便や電話の振り分け、名刺発注など全社の総務業務や環境整備、口座振替や経費精算確認業務などの経理、法務業務のサポート、AIの開発に欠かせないアノテーション業務など多岐にわたる。これらは会社が事業を行っていく上で欠かせない業務であり、データ入力など以前は外注していた業務を引き受けることでコストダウンにも寄与している。自分の働きが会社の役に立っているという感覚が得られるということも、定着を促進する上で重要な要素だろう。

「法的義務だから」という後ろ向きな姿勢では会社も個人も報われない

 マネーフォワードの取り組みを聞き、やはり「法的義務だから」という後ろ向きな姿勢では、雇われる側も会社も得るものが少ないだろうと感じた。障害がある人にも会社に貢献する仲間になってもらうにはどうしたら良いか、会社全体で前向きに考えられることが理想だ。

 しかしそれは、経験のない会社が一朝一夕にできることではない。マネーフォワードのように専門的な知識や経験をもった人が制度づくりや採用、マネジメントに関わることが非常に重要だと感じた。

 中小企業の場合、そのような専門性をもった人材を雇うのは難しいかもしれない。それでも、誰かを障害者雇用の担当に任命して丸投げするのではなく、担当者が研修などで学ぶ機会を与えたり、トップが率先して学び、全社の理解・協力を呼びかけるといったサポートが不可欠だ。

 マネーフォワードの井口さんは、障害者が企業で働き始めてからも、キャリアのフェーズやライフステージの変化などで困りごとが生じる機会があると指摘。その際の相談窓口など、長期雇用を支えるための支援が社外にも多様に用意されていることが望ましいと語ってくれた。これから障害者雇用が根付いてくれば、企業で働く障害者に対する国や自治体のサポートの必要性も顕在化してきそうだ。

前編:「代行ビジネス」活用で農園作業……進まない障害者雇用、隠れた問題点も

やつづかえり

コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。

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