連載
便利すぎるクルマは魅力か、それとも退屈か? ソニー・ホンダ「AFEELA 1」が問いかける“クルマの価値”:高根英幸 「クルマのミライ」(5/6 ページ)
ソニー・ホンダモビリティの新型「AFEELA 1」が注目されているが、機能やサービスは魅力的なものになるだろうか。運転の簡略化やクルマのソフトウェア化が加速する中で、クルマというモビリティだからこそ実現できる体験を提供していくべきだ。
エンタメ以外でも「魅力的な体験」はつくれる
UXを移動中のエンタメ観賞に頼るようでは、自動車産業の未来は暗い。では、UXを魅力要素の一つとするモビリティの代表格となるEVは、今後どのように進化していくべきだろうか。
ソニー・ホンダのAFEILA 1は、ドライブルートやプランの提案などにAIを活用するというが、前述の通りスマホでもできることをクルマに搭載するのはあまり意味がない。クルマというモビリティだからこそできる機能や能力を生かしたUXを提案できなければ、ユーザーは価値を見いださないだろう。
自動運転技術が進展しているが、ドライバーに必要なのは運転支援システムだけではないだろう。例えば、運転を評価・診断したり、危険要素を指摘したりして、運転の改善のために練習できるシステムを搭載したらどうだろうか。
独自の自動運転システムを開発しているベンチャー、TURINGは2023年のジャパンモビリティショーにスポーツカーと自動運転を組み合わせたコンセプトモデルを出品。自分で運転する時にはスポーティなハンドリングを楽しみ、それ以外では自動運転で快適に安全に移動するコンセプトだ。これも自動運転で提供できるUXの一種といえないだろうか(筆者撮影)
筆者は以前、運転講習を行うベンチャー企業に参画していたことがある。だが、お金を払ってわざわざ自分の運転のダメ出しをしてもらうドライバーや企業はまだまだ少なく、最終的に事業は頓挫した。
しかし、人間ではなくAIが診断すれば、状況は変わるかもしれない。辛辣(しんらつ)な評価でも、機械的に診断すれば反発も少なく、受け入れられやすいはずだ。
高齢ドライバーによる運転ミスを予防・改善する効果も期待できるし、運転の楽しさに気付けるドライバーも増えるのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
セダンが売れる時代はもう来ないのか クルマの進化で薄れていく魅力
SUVやミニバンと比べて、セダンの人気は衰退している。目新しさが魅力だったSUVも走行性能などが高められたことに加え、ドライバーの意識も変わっている。スポーツカーも衰退しているが、所有して運転する楽しさを追求できるクルマも必要だ。
なぜ「ジムニーノマド」の注文が止まらないのか 変わりゆくクルマ選びの基準
スズキが発表した「ジムニーノマド」に注文が殺到し、受注を停止する事態になった。SUV人気に加えて、実用性と新しい刺激の両方を得られる期待感が高いようだ。今後のクルマ選びに対しては、充実した機能や性能をいかに分かりやすく伝えるかが重要になる。
スポーツカーに未来はあるのか “走りの刺激”を伝え続ける方法
スポーツカーはクルマ好きの関心を集め続けているが、乗り回せる環境が限られるようになってきた。一方、マツダ・ロードスターなど価値のあるモデルも残っている。トヨタは運転を楽しむ層に向けた施策を展開している。今後のスポーツカーを巡る取り組みにも注目だ。
クルマの「音」は演出できる? EV時代に“サウンドビジネス”が広がってきた
騒音規制が厳しくなった今も、エンジン音や排気音などのサウンドはドライバーの気分を高める重要な要素だ。近年は高性能EVでも、走行音などを演出するシステムを導入している。自動車メーカーなどは個人ユーザーの満足度を高めるために工夫を凝らしている。
