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「中野サンプラザ 白紙化」の衝撃 なぜ再開発は止まったのか(2/6 ページ)
再開発が頓挫する場所が出ている。資材や人件費の高騰などが原因ではあるが、今後の再開発はどうあるべきなのか……。
建築資材や人件費の高騰で工事が中止に
中野サンプラザの件に限って言えば、その計画が頓挫した大きな理由は「建設費の上振れ」だ。より詳細に見ていくと、そこには建築資材と人件費の高騰という2つの要因がある。
日本建設業連合会が毎年出している資料に、その詳細が書かれている。
同資料によれば、2021年から2025年にかけて建築資材は約34%も値上がりをしている。世界中で原材料や原油などのエネルギーが不足していることが背景にあると考えられている。2021年に発生した世界的な木材不足である「ウッドショック」の余波がまだ続いていることや、鉄鉱石の不足から起こった「アイアンショック」、さらにウクライナ情勢の悪化による物流網の混乱に加え、日本特有の事情として円安が重なっている。
また、人件費高騰の影響も大きい。
そもそも賃金水準が低いために、人手不足に悩まされていた建築業界。これを問題とした政府は業界の賃上げ方針を打ち立て、公共事業を行う建設労働者の賃金単価である「労務単価」は2021年から22.9%引き上げられている。
工事の中で材料費の割合が50〜60%、人件費が30%だと仮定した場合、これらを総合して考えると、この4年ほどで全建設コストが24〜27%も上昇した計算になる。インフレが叫ばれている日本であるが、この数値は物価上昇指数よりも高い。
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