大阪・関西万博に忍び寄る“デジタルの影” サイバー攻撃は開幕前から始まっていた:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
大阪・関西万博が4月13日に開幕する。こうした国際的なイベントの開催時には、サイバー攻撃が多く発生している。今回の万博では今のところ大きな被害はないが、不正アクセスや偽サイトなどが確認されており、注意が必要だ。
万博を利用した攻撃もすでに起きている
実は、大阪の万博も開催前からサイバー攻撃を受けている。
まず、2020年10月の攻撃だ。2020年10月7日から8日にかけて、2025年日本国際博覧会協会に対して不正アクセスが確認された。攻撃者はメールアカウントを乗っ取り、それを使って約6万3000件のフィッシングメールを国外のメールアドレスに向けて送信した。被害は現時点でも確認されていないという。
こうしたサイバー攻撃は、1〜2年も前から準備されているといわれており、この攻撃も万博そのものへの攻撃につながる可能性がある。
このケースについては、警察庁も捜査に乗り出している。警察庁によれば「警察庁サイバー特別捜査部及び警視庁ほか道府県警察による捜査等で判明した、攻撃対象、手口、攻撃インフラ等を分析した結果、『MirrorFace』による攻撃キャンペーンは、主に我が国の安全保障や先端技術に係る情報窃取を目的とした、中国の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃活動であると評価しています」という。
MirrorFaceは、中国政府とのつながりが指摘されているグループであり、情報窃取が目的だった可能性が高いということだ。
さらに、MirrorFaceは2024年11月にも、万博を利用したサイバー攻撃を行っている。MirrorFaceから欧州連合(EU)の関係者を狙って外交関連機関に送り付けられた攻撃メールには「The EXPO Exhibition in Japan in 2025.zip」というファイルが添付されていた。これを実行するとマルウェアに感染する。
もちろんこうした攻撃は、万博に関与している民間企業にも波及するので注意が必要だ。
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