「スタバ配送ロボ」が街を爆走!? 実はこれだけ広がっている「配送自動化」の世界:グロービス経営大学院 TechMaRI 解説(2/3 ページ)
人手不足にEC(ネット通販)配送量の増加、さらにトラックドライバーの労働時間を制限する2024年問題──。日本が迎える物流危機について、数年前から報道で頻繁に伝えられてきた。2025年の今、物流危機への対応は進んでいるのだろうか。
「海外は進んでいて日本が遅れている」わけではない
国土の広い米国、中国、オーストラリアなどでは、商業サービスとしてのドローン配送が段階的に拡大し、配送ドロイドも大学キャンパスを中心に導入が進んでいる。これらの国では、一部地域では日常的に利用されるほど定着しているが、国全体ではない。一概に「海外が進んでいて日本は遅れている」とは言えないだろう。
【米国】
配送ドロイドでは商用サービスのパイオニア、Starship Technologiesなど、複数のロボットベンダーが小売事業者と連携している。規制の厳しさは州によるが、おおむね緩やかである。大学キャンパスや一部都市郊外ではフードデリバリーやコンビニ商品の配送、宅配便などさまざまなユースケースで「日常のサービス」として定着しつつある。
ドローン配送ではトッププレイヤーのWingが2019年より米国とオーストラリアでの商用配送を展開し、2022年には大都市圏でもドローン配送を始めた。現在までに45万回のドローン配送を実施している。2024年には大手食品スーパーのWalmartやフードデリバリーDoorDashと提携して事業を拡大するとともに、ロンドンでもテスト飛行を行うなど地理的拡大を進める。
小売業界からも商用ドローン配送への期待は高く、WalmartはWing以外にもDroneUpなどスタートアップ数社と提携している。一方で米国の連邦航空局(FAA)の規制は厳格であり、商用配送の認定取得社はごくわずかである。
【中国】
中国は配送自動化の最先端と言える。進展の速さは、技術があれば使ってみるという企業のスピードにあるだろう。配送以外にも顔認証やモバイル決済など、規制が整備される前に民間でかなりの規模の導入が進むことも多い。
政府もまた新技術に対して戦略的に後押しを行う。民間主導の社会実装で顕在化したリスクに対応する規制を整備し、安全を確保した上で柔軟な枠組みで運用を行う。配送ドロイドは機体の規格や走行ルールの大枠を、すでに国が規定(詳細は各地方政府が要件を定める)しており、指定区画内でEC大手JD.comや中国大手フードデリバリーの美団が商用運行を行っている。
商用ドローン配送はというと、中国は世界の消費者向けドローンで7割超の圧倒的シェアを持つ。国家の成長領域にドローンは指定されており、世界トップの開発環境にある。物流への商用利用はまだ限定的ではあるものの、2016年からJD.comが農村での配達にドローンを活用し始めた。2018年にはSF Expressが中国初の承認を得て農村地域へのサービスを開始している。基本的に人口密集地域の飛行は不可だが、一部都市では管轄当局の監督下で都市上空の定期航路運用が認められている。深圳市では2022年から美団がドローン配送を開始し、2023年11月までの配送は21万回を数える。
【オーストラリア】
前出の米Wing社だが、2019年に開始したドローン配送事業の市場としてオーストラリアを選んでいる。ドローンに関する法律を導入したのはオーストラリアが世界初で、現在でもドローン配送が比較的進んでいる地域のひとつだ。
Wingは地元食品スーパーのColesやファストフードと提携し、商品を配送している。ローガン市では1日に1000回以上の配送を実施し、この地域ではドローン配送が日常になっている。ただし、首都キャンベラでは騒音に対する住民の反対運動によって、サービス停止に追い込まれるなど、普及度合は地域によって異なる。
一方で、ドローンと比較して規制のハードルが低い配送ドロイドは実験段階にとどまる。2016年〜2017年にかけてDomino’s Pizzaなど一部企業が、限定した地域内で配送ドロイドの実証実験を行ったが、以降は小規模な試験例しかない。連邦レベルでの統一した配送ドロイドの法律は整備が追い付いておらず、特定の常設サービスはない。
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