インタビュー
「見分けるのはほぼ不可能」――NISA普及でフィッシング詐欺横行、対策急務に(5/5 ページ)
「フィッシング詐欺にあった覚えはない」と思っていても、そもそも気付くことが非常に難しい。その手口とは。
求められる対策と国レベルでの連携強化
詐欺の巧妙化が進む中、本野氏は「詐欺の手口を知ることが最も有効な対策の一つ」と強調する。さらに個人レベルでは、自分の情報がどの程度漏えいしているかを事前に確認することも有効だという。
最大の課題は詐欺発見時の通報窓口の不在だ。「総務省をかたる電話があり、番号を聞いて本物の総務省に電話したが、放っておいてくれと言われた」という利用者の体験に対し、本野氏は「現状ではユーザーが詐欺に気づいた時に相談できる窓口がない」と問題点を指摘する。
「日本には企業や省庁をまたいだ詐欺通報の仕組みがなく、横の連携が不足している」。詐欺に関する情報は各企業や官公庁に分散しており、通報を受けても「対応しきれない」状況だ。「シンガポールには政府主体で情報共有の仕組みがある。日本にもそういった仕組みが必要」と訴える。
金融サービスのデジタル化と詐欺対策は表裏一体だ。証券会社各社は被害拡大防止のため一部銘柄のオンライン注文停止を余儀なくされており、日本証券業協会は多要素認証の義務化を含めたガイドライン見直しを検討している。
本野氏によれば、今後の詐欺対策では、詐欺を見分けようとする従来のアプローチから、発生を前提とした対処へと考え方を変える必要がある。「インターネットに触れる=詐欺に合うという認識を全てのユーザーが持つべき時代に入っている」との警告とともに、産官学が連携した総合的な対策構築を訴えた。
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