Switch2登場で「レガシーIP戦略」はどう変わる? 任天堂IPのマーケ戦略の裏側(3/6 ページ)
任天堂のIP戦略をマーケティングの視点から深掘りしてみたところ、単なる過去作の移植やリメイクにとどまらない、緻密な戦略が見えてきた。
ハード移行にともなうIP展開のアップデート、ファン層の世代交代戦略
そして今、Switch2という新たなハードウェアへの移行期において、任天堂はこの強力なIP資産を最大限に活用しようとしている。その鍵となるのが、「レガシーIP」の戦略的な再投入である。
「リズム天国」や「トモダチコレクション」といったタイトルは、主にニンテンドーDSやWii Uで人気を博した。これらのハードの主要ユーザー層は、現在30代から40代、まさにITmedia ビジネスオンラインの読者層とも重なる。彼らにとって、これらのタイトルは青春時代の懐かしい思い出と結びついている可能性が高い。
任天堂がこれらのIPをSwitch2で復活させる狙いは、まずこの「ノスタルジー」に訴求することにあるだろう。かつて夢中になったゲームが、最新のハードで、より美しく、より快適に遊べるようになる。これは、休眠していたファンを呼び覚まし、Switch2購入の強力な動機付けとなり得る。
しかし、任天堂の戦略は単なる懐古趣味にとどまらない。そこには、巧妙な「ファン層の世代交代」戦略が織り込まれている。
30代〜40代の親世代が、自分が若い頃に楽しんだ「リズム天国」や「トモダチコレクション」を、今度は自分の子供と一緒にSwitch2でプレイする。このような「世代を超えた共体験」は、任天堂が長年得意としてきたものだ。親が子供にゲームの遊び方を教え、一緒に笑い、時には競い合う。このプロセスを通じて、子供たちは自然と任天堂IPに親しみを持ち、新たなファンとなる。つまり、レガシーIPは、親世代から子世代へとブランドのバトンをつなぐための、重要な媒介役を果たすのである。
これは、マーケティングにおける「ファミリーライフサイクル」の考え方にも通じる。就職や結婚、出産などといった消費者のライフステージの変化によって、ブランドとの関わり方も変化する。任天堂は、かつての若者ゲーマーが親世代になったタイミングで、彼らが慣れ親しんだIPを「親子で楽しめる」形で再提供することで、ブランドとの関係性を再構築し、次世代へとつないでいこうとしているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
場末のスナックはどうやって稼いでいるのか?
集客や収益が安定したビジネスがしたい――そう考える人はスナック経営が参考になるかもしれない。
ナイキ「オワコン化」の足音 株価急落、新興シューズメーカーが影
ナイキの不調には複数の要因が絡んでいるようだ。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
企業にとって残業しない・させない文化の定着は不可欠だ。しかし――。
部下が相談する気をなくす、上司の無神経な「たった一言」
部下が報連相しようとしたときの上司の何気ない「ある一言」が、部下の心を萎縮させているのだ。
「たまにはユニクロ以外も着ようかな」←その店もユニクロ系列です 高級ブランドも抱えるファストリの戦略
「ユニクロ」や「GU」で知られるファーストリテイリング。実は中〜高価格帯ファッションブランドも傘下に抱えていることもご存じだろうか。
