Switch2登場で「レガシーIP戦略」はどう変わる? 任天堂IPのマーケ戦略の裏側(2/6 ページ)
任天堂のIP戦略をマーケティングの視点から深掘りしてみたところ、単なる過去作の移植やリメイクにとどまらない、緻密な戦略が見えてきた。
マリオやゼルダ、どう森にポケモン……“育てるブランド”としての強さ
任天堂の最大の強みは、マリオやゼルダの伝説、どうぶつの森やポケットモンスターといった、世界的に認知され、世代を超えて愛される強力なIPを多数保有している点にある。これらのIPは、単なるゲームキャラクターやタイトルにとどまらず、強力な「ブランド」として確立されている。
マーケティングにおける「ブランドエクイティ(ブランド資産価値)」の観点から見ると、任天堂IPは極めて高い価値を持つ。長年にわたり、一貫した世界観やキャラクター性を保ちながらも、時代の変化や技術の進化に合わせてゲーム体験をアップデートし続けることで、ファンとの間に強い信頼関係と感情的なつながりを築き上げてきた。
例えば、スーパーマリオシリーズは、基本的なアクションゲームとしてのおもしろさを核としながら、2Dから3Dへ、そしてオープンワールドへと、常に新しい遊びを提供し続けてきた。しかし、マリオやルイージ、ピーチ姫といった主要キャラクターの個性や関係性は、驚くほどブレがない。この「一貫性」と「革新性」のバランスこそが、ブランドとしての寿命を延ばし、新たなファンを獲得し続ける秘訣(ひけつ)なのである。
同様に、「ゼルダの伝説」は、シリーズごとにゲームシステムやアートスタイルを大胆に変えながらも、勇気・知恵・力といったテーマ性や、探索と謎解きのおもしろさという本質は守り続けている。「どうぶつの森」は、スローライフという独自の体験を提供し、現実の時間と連動することで、プレイヤーの生活の一部となるような深い関係性を構築した。
これらのIPは、いわば「育てるブランド」である。一度リリースして終わりではなく、続編やスピンオフ、リメイクや関連グッズ、テーマパークや映画など、多角的な展開を通じて、ブランドの世界観を広げ、ファンとの接点を増やし、ブランド価値を継続的に高めているのだ。この長期的な視点に立ったブランド育成こそが、任天堂の揺るぎない競争優位性の源泉となっている。
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