Switch2登場で「レガシーIP戦略」はどう変わる? 任天堂IPのマーケ戦略の裏側(6/6 ページ)
任天堂のIP戦略をマーケティングの視点から深掘りしてみたところ、単なる過去作の移植やリメイクにとどまらない、緻密な戦略が見えてきた。
Switch2で描く任天堂の未来
任天堂がSwitch2に向けて進めているレガシーIP戦略は、単なる過去資産の有効活用にとどまらない、極めて計算されたマーケティング戦略である。それは、ブランドエクイティの維持・向上、ノスタルジー喚起による既存ファンへの訴求、世代交代による新規ファン獲得、そして「ノスタルジー」と「最新体験」の両立によるIP価値の最大化を同時に狙うものだ。
さらに、PlayStationタイトルの移植やコミュニケーション機能の強化といった動きは、任天堂が自らの戦う土俵を再定義し、ゲームという枠を超えたエンターテインメント・プラットフォームとしての地位を確立しようとしている野心さえ感じさせる。
もちろん、これらの戦略が全て成功するかどうかは未知数である。しかし、常にユーザーに驚きと新しい楽しみを提供してきた任天堂。Switch2とその周辺戦略においても、われわれの想像を超えるような一手を用意している可能性は高い。
「故きを温ねて新しきを知る」――任天堂は、まさにこの言葉を体現するかのように、大切に育て上げてきたIPという名の「故き」を温め、Switch2という「新しき」舞台で、再び世界中の人々を熱狂させる準備を着々と進めている。その動向から、今後も目が離せそうにない。
金森努(かなもり・つとむ)
有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師
金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。
2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。
コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、EC等、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)など。
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