キムタク、長澤まさみ、横浜流星、羽生結弦――なぜ中国ブランドは国民的スターに頼るのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
ここ数年、人気芸能人が中国メーカーのCMに出演する機会が増えている。なぜ中国企業は日本のCMに「分かりやすいスター」を起用するのか。その理由は……。
日本人は「スターを起用したCMに世界一弱い」
自分たちではあまり意識していないかもしれないが、実はわれわれ日本人は「スターを起用したCMの影響を世界一受けやすい」のだ。
2010〜13年実施の古い調査だが、世界的なマーケットリサーチ企業のミルウォード・ブラウン(米国)が世界各国で有名人を起用した広告の割合を調べたところ(日本ではカンター・ジャパンが実施)、日本が56%とダントツに多かった。米国、英国、ロシアは1割程度、ブラジルが17%、インドや東南アジアが2割程度、中国が33%、韓国が47%だった。
なぜこんなに多いのか。「権威に弱い国民性」「有名人がCMに出ていればちゃんとした企業と安易に考えてしまう人が多い」など理由はいろいろ考えられるが、やはり1番の理由は「人気スターを起用したCMを流すとよく売れる」という実績があるからだ。われわれ日本人はなんやかんやと国民的スターがCMで連呼する商品を選び、国民的スターが「顔」となっているブランドに好感を抱いてしまうものなのだ。
そういう日本の消費者の志向を踏まえれば、中国ブランドが日本のスターを積極的に起用するのも当然だ。
テクノロジーや自動車という分野は、日本の「お家芸」ともいわれてきたので何かのきっかけで国民の「反中感情」が高まるリスクもある。しかし、日本人ならば誰もが知る国民的スターを「顔」にしておけばそういうリスクも軽減でき、しっかりと広告効果も出る。
例えば、BYDが分かりやすい。先ほど申し上げたように、EVの性能面では日本製を上回るのに、日本ではほとんどその名は知られていない。しかも、「中国のEVなんてヤバいだろ」というネガティブイメージも根強い。そこでBYDとしては、長澤まさみさんという人気俳優を起用して、知名度を一気に高めたところ、この戦略が見事に当たった。
CM放映中に発売した最新モデルBYD SEALは、2カ月間で約400台の受注に成功。2024年7月については、3車種の総受注台数は過去最高となる400台超を記録した。正規ディーラーへの来店客数もにぎわいを見せており、前年同月比プラス86%となった(日経クロストレンド 2024年8月29日)
BYDが日本で展開している車種。左からBYD SEAL(シール)、BYD ATTO 3(アットスリー)、BYD DOLPHIN(ドルフィン)(出典:BYD Auto Japanのプレスリリース、以下同)
BYDからすれば、まさに「長澤まさみ様様」なのだ。ただ、このような話を聞くと「中国企業はスターを使ってもうけられるが、スター側は中国のシンパと見られるリスクがあるのでは」と心配する人も多いだろう。
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