パナソニックは日本と丸かぶり 生産性低下で30年間成長できていないワケ:スピン経済の歩き方(6/8 ページ)
パナソニックの1万人リストラが話題になっている。原因は生産性の低下によるものだが、その姿は、この国の低迷ぶりとまるかぶりといえる。なぜそう思うかというと……。
「現状維持を望む50代」が本当にあふれている場所
では、そうした「現状維持を望む50代」は、どこで働いているのかというと「中小企業」である。
ご存じの方も多いだろうが、日本企業全体の中でパナソニックのような大企業はわずか0.3%に過ぎない。99.7%は中小企業で、そのうち約6割は、従業員が数人規模の「小規模事業者」だ。しかも、日本人の7割がこの中小企業で働いている。つまり「現状維持を望む50代」が本当にあふれているのは、パナソニックなどの大企業ではなく、全国336万社の中小企業なのだ。
こういう現実を踏まえれば、中小企業の生産性が低くなるのは当然だ。「現状維持を望む50代」が経営者や従業員として多く関わっているので、新たな付加価値を生み出そうとせず「現状維持」――つまり「倒産しない」ことを目的に運営している中小企業が日本中にあふれているのだ。
「そんなのはお前の妄想に過ぎない」と失笑する人も多いだろうが、データを見ればそう考えざるを得ない。中小企業庁が発表している「中小企業白書(2019年版)」の「存続企業の規模間移動の状況(2012〜2016年)」が分かりやすい。
これは2016年時点で、廃業せずに存続している事業者295万社が、4年前の2012年からどれほど、従業員を増やすなどして企業規模を拡大させてきたのかを調べたものである。それによると、規模拡大に成功したのはなんと7.3万社のみで、95%に当たる281.3万社が「規模変化なし」だったのだ。
つまり、『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)や『がっちりマンデー!!』(TBS系)のような情報番組で「急成長している中小企業」などと紹介されるのは超マイノリティーであって、95%は「成長も倒産せず、現状維持を目的とした企業」なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜ旅館は「1泊2食付き」を続けるのか 観光地の夜が静まり返る本当の理由
「1泊2食付き」から「朝食のみ」や「素泊まり」へと転換する事業者が増えている。日本の観光ビジネスにとって良い兆しだが、なぜかというと……。
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
インバウンド需要が旺盛で、日本の観光業界が盛り上がりを見せています。では、航空会社の業績はどうなっているのでしょうか。JALとANAの決算をベースに分析したところ……。
衰退するシャープは「日本そのもの」か “世界の亀山モデル”が失敗パターンにハマった理由
シャープが、テレビ向け大型液晶パネルの生産を2024年9月末で終了すると発表した。同社はまるで「世界の変化に対応できず」衰退していく「日本そのもの」のようだ。なぜかというと……。
なぜ旅館は「1泊2食付き」を続けるのか 観光地の夜が静まり返る本当の理由
「1泊2食付き」から「朝食のみ」や「素泊まり」へと転換する事業者が増えている。日本の観光ビジネスにとって良い兆しだが、なぜかというと……。
「年収700万円」の人が住んでいるところ データを分析して分かってきた
「年収700万円」ファミリーは、どんなところに住んでいるのでしょうか。データを分析してみました。
