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パナソニックは日本と丸かぶり 生産性低下で30年間成長できていないワケスピン経済の歩き方(7/8 ページ)

パナソニックの1万人リストラが話題になっている。原因は生産性の低下によるものだが、その姿は、この国の低迷ぶりとまるかぶりといえる。なぜそう思うかというと……。

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「失われた30年」の本当の原因

 このような話を聞くと、「現状維持をしたいわけじゃなく、成長したくてもできないのだ」という人もいるが、そういう中小企業経営者の窮状を受けて1964年に中小企業基本法が成立し、さまざまな補助金が半世紀にわたってバラまかれた。その結果が「1人当たり生産性」が異常に低い今の日本だ。

 この構図は、減反政策で農家を半世紀にわたって補助金漬けにした結果、日本の農家の生産性・競争力をとことん低下させたのとよく似ている。バラマキでは、生産性は上がらないのだ。

 中小企業経営者から「こっちは社員を食わせているんだ、補助金もらって倒産を回避して何が悪い!」というお叱りが飛んできそうだが、もちろんそれは悪くはない。自分と家族、そして雇っている従業員とその家族の生活を考えれば、とにかく「会社の存続」が最大の目標であり、そのため利用できるものは何でも利用すべきとなるのは当然だ。

 ただ、これも先ほどのパナソニックにおける「定年退職まで会社にしがみつきたい人」と同じで、「日本」から見るとあまりよろしくない。補助金でどうにか延命する中小企業が世の中にたくさんあふれかえるということは、新たな付加価値を期待できないので、生産性はどんどん低下していく。

 また、こういう現状維持型の中小企業が存続することは、「雇用を守っている」ように見えるが、実は「従業員を低賃金労働に縛り付けている」側面もある。つまり、成長しない中小企業が世にあふれた社会というのは、常軌を逸した低賃金がまん延した社会でもあるのだ。

 これが「失われた30年」の本当の原因と言っていい。


失われた30年(画像はイメージ)

 こういう構造的問題を解決しようということで、パナソニックは大リストラに踏み切ったワケだが、個人的にはかなり厳しいと思っている。

 大企業にお勤めの方たちならばよく分かると思うが、早期退職というのは往々にして「会社側が期待する有能な人ほど応募して、会社側が辞めてほしいと考えている人ほど残る」という現実があるからだ。

 かつてソニーにあった「追い出し部屋」のようなことをやれば今の時代、人権侵害だとパワハラだなんだと訴えられ、経営陣はすぐにクビが飛んでしまう。そこで「次のキャリアを目指す人を応援します」なんて呼びかけるわけだが、それに応じるのは、基本的に「チャレンジする意欲や自信がある人」である。「定年退職まで会社にしがみつきたいという人」は自分には関係ないとスルーする。つまり、この手のリストラは、生産性を上げるどころか、かえって下げてしまう恐れがあるのだ。

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