パナソニックは日本と丸かぶり 生産性低下で30年間成長できていないワケ:スピン経済の歩き方(8/8 ページ)
パナソニックの1万人リストラが話題になっている。原因は生産性の低下によるものだが、その姿は、この国の低迷ぶりとまるかぶりといえる。なぜそう思うかというと……。
日本経済が成長できない本当の理由
これは日本にも当てはまる。
先ほど見たように、日本の中小企業は95%が「倒産しないことを目的とした家族経営」である。労働者の賃金がここまで低いことを考えれば、成長を目指さない経営者には、廃業や引退を選んでもらったほうが、国としてはありがたいが、政府はそんなことは口が裂けても言えない。
中小企業経営者は自民党の「票田」だからだ。そういう大人の事情があるので「生産性向上」の名のもと、成長する中小企業への応援だけではなく、「潰れそうな現状維持型中小企業」にも手厚く補助金をバラまかなければいけない。
パナソニックのリストラ同様、生産性向上対策も、結局のところ「現状維持を望む人」を守ることに終始しているのが実態だ。日本がいつまでも生産性が上がらず、経済が成長できない本当の理由がここにある。
「1人も解雇するな」を掲げたパナソニックは、1964年の中小企業基本法で「中小企業保護」を掲げた日本と非常に重なる部分がある。全ての人を平等に守れば、そうした人々は一生懸命働いて、能力を発揮して、組織も社会も成長できる、という考えが根底にある。
ただ、これは「人口が右肩あがりで増えている国」だから成立する話だ。松下幸之助や高度経済成長期の政治家が、毎年90万人もの人口が減少している今の日本を見て同じ考えを抱くとは思えない。パナソニックと日本がともに「生産性の低下」という問題に直面して、30年以上も経済成長できていないシビアな現実を、ビジネスパーソンの皆さんも自社の経営戦略の参考にしていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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