エンジニア「35歳定年説」はもう古い 引っ張りだこのミドル・シニア層に共通するスキルとは?(3/4 ページ)
かつてエンジニアは「35歳定年説」がささやかれ、40代以降の転職は難しいといわれることも少なくありませんでした。しかし近年、IT転職市場において40〜50代=ミドル・シニア層の転職が活発化しています。なぜ、40代以上のIT人材が求められるのでしょうか。
採用の決め手は「技術+α」の価値
採用現場では今、ミドル・シニア層のIT人材に対し、即戦力以上の役割を期待しています。企業が求めているのは、技術力に加えてプロジェクトマネジメントや組織貢献、若手育成といった「技術+α」の価値です。40代以上のIT人材を採用した企業からは、即戦力としての活躍はもちろん「若手の育成や指導にも貢献してくれた」(31.6%)、「リーダーシップやマネジメント力を発揮してくれた」(28.8%)といったポジティブな声が聞かれます。実際の事例を見てみましょう。
【事例1】スタートアップにおけるシニアエンジニアのマルチロール活躍
あるスタートアップでは、大手企業出身の40代エンジニア3人を中途採用しました。彼・彼女らはそれぞれメーカーやSIerで長年の開発経験を持ち、マネジメント経験も豊富。採用の決め手は、技術力に加えた「広い業務知見」と「柔軟な開発マインド」でした。
入社後は、分業体制にとらわれず、要件定義から実装、業務改善まで幅広い領域を自ら担うスタイルで、開発のスピードと品質向上に貢献。さらに、若手とのオープンな技術議論を促進することで、チーム全体の技術水準と視座を引き上げてくれています。
採用担当者からは「『シニア人材の参画によって、プロダクトに多角的な視点が生まれた』といった現場からの声も上がっており、多様性がもたらす価値を組織全体で実感しています」といった声が寄せられました。
【事例2】SaaS企業におけるPM採用、「行政基幹業務」の変革を担う存在に
行政向けのSaaSを展開するある企業では、プロダクトの成長に伴い、従来の業務支援の枠を超えて、行政基幹業務そのものの変革へと領域を広げています。そうした中で新たに求められ始めたのが、「行政の基幹システムに精通したプロジェクトマネージャー」でした。
採用されたのは、住民情報、税、福祉などの複雑な業務領域で、長年大規模システムの導入を担ってきた大手SIer出身の40代PM。求められたのは技術力よりも、行政業務の構造を深く理解する「業務ドメインの知見」でした。
同社は、スタートアップならではのスピード感を保ちつつ、公共領域に適合する信頼性と堅実さを獲得するために、経験豊富なミドル層の力を必要としていました。まさに、ドメイン知識という「技術+α」が決め手となった採用事例です。
事例2でも触れたように、近年、SaaS企業は中小企業向け市場からエンタープライズ企業向け市場へと進出する動きを強めています。これに伴い、「大規模プロジェクトのマネジメント経験」や「複雑な業務要件の整理能力」への注目が高まっています。
特に、エンタープライズ向けのSaaS導入では、複数部署やさまざまなステークホルダーとの調整、厳格なセキュリティやガバナンスへの対応が求められるため、SIerで培った「調整力」や「プロジェクト推進力」は大きな強みとなります。年齢にかかわらず、こうしたスキルを備えた人材へのニーズは今後も拡大していくと考えられるでしょう。
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