雪塩さんどは「一本足打法」で終わらない――ヒットを生み出し続ける秘密とは?:地域経済の底力(2/4 ページ)
大ヒットとなった「雪塩さんど」。ただ、宮古島の雪塩社が危険視するのは「一本足打法」になることだ。ヒットを生み出し続けるためには、どのような考え方が必要なのか。インタビュー後編。
宮古島のマンゴーやメロンなども原材料に
宮古島に新設される工場は、ビジネスパートナーである寿製菓との合弁で運営する。その合弁会社で作った商品を、宮古島の雪塩が販売する形をとる。この工場は、西里社長の「島で売るものは、島で作りたい」という思いを実現したものだ。その意義について、次のように語る。
「宮古島で生産されているマンゴーやメロン、黒糖や紅いもといった特産品の“出口”を設けることができます。原材料は現地で調達できるため輸送コストがかからず、さらにそれらで作った商品は海外市場まで見据えることができます。今回の工場は、私たちがこれから取り組もうとしている挑戦の“入口”となるのです」
同社はこの新工場の稼働にともない、組織体制も変更する。製造部門は合弁子会社に移管し、会社としては販売の機能に特化していく方針だという。
「一部の小規模な製造は続けますが、基本的には寿製菓との合弁会社の中に、私たちの製造部門が入ります。ノウハウは寿製菓の方が圧倒的に上なので、そこはお任せしようと思っています」
この合弁事業を通じて、宮古島の特産品を活用した商品開発と、より広いマーケットへのアクセスを両立させる戦略だ。
ただ、興味深いのは、雪塩さんどは人気商品であるにも関わらず、現状は沖縄県外には展開を控えていることだ。西里社長は「沖縄県内で販売したいので、あえて県外への展開は抑えています」と明言する。
この方針は、かつて東京に塩の専門店を出店した経験から得た教訓に基づいている。
「東京に専門店を出して分かったのは、派手に見えるだけで、手間がかかる割には大した収益にならないということでした。むしろ、沖縄県内でナンバーワンの地位を確固たるものにしていった方が良いと思いました」
一方で、将来的な展開として、別の方向性も模索している。
「沖縄以外でこの商品を売るよりは、沖縄というマーケットの中で別ブランドを立ち上げた方が良い。今考えているのは、紅いものシリーズです。素材そのものを生かした商品作りに、もっと上流から関わっていきたいと考えています」
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