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なぜ“怪しい”のに売れている? リカバリーウェアという不思議なヒット商品スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

リカバリーウェアが売れている。本当に効果があるのかビミョーなところだが、それでもヒットし続けるワケとは――。

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それでもリカバリーウェアがヒットし続けるワケ

 「いやいや、そうは言っても実際に着たら長年悩まされた腰痛が治ったぞ」「母の介護のときに着たけれど、すごいラクに体を起こせるぞ」というような体験談を語る人も多いだろうが、実はそれこそがリカバリーウェア最大の強みであり、これからもヒットし続ける理由だ。それは一言で言えば、こうなる。

 「なんだか怪しいなと半信半疑で着てみたら、効果が体感できたという人がそれなりにいる」

 ネットやSNSでさまざまな荒唐無稽な情報が流れることからも分かるように、基本的に人間は自分の信じたいものを信じる。エビデンスがどうとか、ファクトチェックというのもしょせんはポジショントークだと全く信じない人も増えている。

 そういう時代に、リカバリーウェアはカチッとハマる。最初は怪しいなと思っていても、自分が信じてる有名人やインフルエンサーたちがこぞって愛用しているのを見ているうちに、「もしかしたら本当かも」と手を伸ばす。そして実際に身に着けてみると、有名人やインフルエンサーと同じような「効果」を実感するという流れだ。

 もちろん、この「実際に着てみたら驚くほどの効果が体感できた」というのも、科学的には説明が付く話だ。それは「プラセボ効果」である。

 臨床試験などで薬の効果を調べるため、医師や患者に知らせることなく、本当の薬を処方するグループと、「偽薬」を処方するグループを比較する。そこで医師から偽薬を処方されたグループにも、ある程度の「有効性」が認められることが少なくない。分かりやすく言えば、「病は気から」というやつだ。


「病は気から」(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 リカバリーウェアは以前からプラセボ効果の存在が指摘されている。

 「この服を着た人が重い荷物を軽々と運んでいるのをYouTubeで見た」という記憶が頭のどこかに刷り込まれていると、実際に自分がこの服を着たときにも、そのイメージに引っ張られて思わぬ力を発揮してしまうことがある。腰痛などの場合も、無意識に姿勢をよくしたり、脳が「痛みがなくなった」と錯覚したりすることがある。

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