無印良品×書店=6次産業? 橿原書店の初月売上が示す“手を取り合う”の未来(2/4 ページ)
橿原書店と無印良品がタッグを組み、書店の6次産業化に挑戦している。初月の売り上げはどうだったのか。新たな“手を取り合う”ビジネスモデルの可能性と未来を取材した。
無印目当ての来店客も書籍を「ついで買い」
2025年3月の開業後、2カ月の成果は期待を上回っている。初月の売り上げは1200万円と、目標(1000万円)をクリアしたという。「売り上げは坪効率で見ても、書店業界で一つの指標とされる10万円を超えている」と、日販の地域事業開発チームリーダー山元佑馬さんは手応えを語る。
開業特需が落ち着いた4月も採算ラインを維持しており、順調な滑り出しを見せている。
無印良品でのショッピングを目当てに来店した客の書籍購入率も高い。「目当ての商品を買ったあと、書店に立ち寄り、ついで買いをする人が多い」と山元さんは分析する。
特に売れ行きがいいジャンルは、絵本・児童書だ。書籍売上全体の2割強を占め、通常の書店と比較すると2倍近い比率だという。山元さんによると、これほど児童書の構成比が高い書店は珍しく、想定を大幅に上回る結果となった。
背景には、ファミリー層の来店客が多いことに加え、無印良品の店内中央に奈良県産の吉野杉を使った木製遊具や芝生のある空間を設置し、そこに約1万冊の絵本を用意して、子どもが遊びながら本に親しめる環境を整えたことが挙げられる。
当初は、自由に読めるようにすると、商品として売れないのではという懸念もあったが、実際には購入につながっている。
そのほか、各フロアでの併売戦略も功を奏している。例えば、収納雑貨の売り場に掃除関連の本を配置するなど、商品との関連性を意識した陳列を行うことで、無印良品の商品と書籍の併売が実現した。書籍のみの購入客もいるが、無印良品の商品と一緒に購入する客も多いという。
「生活の身近な動線上に本が買える状態を作ることが重要だ」と山元さんが語るとおり、普段は書店に足を運ぶことが少ない層の取り込みにも成果が見て取れる。
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