なぜ「映画祭」は開催されるのか 文化、経済、国の思惑:『映画ビジネス』(1/4 ページ)
カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなど世界の映画祭は、作品の発表と評価の場であると同時に、文化力の発信や経済効果を狙った国の戦略でもある。映画祭がなぜ開催されるのか、その背景は……。
この記事は『映画ビジネス』(和田隆/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
映画賞なるものは国内外に数多くありますが、有名な世界三大映画祭のカンヌ、ヴェネチア、ベルリンを筆頭に、映画の祭典である国際映画祭のコンペティション部門などに正式出品、特別招待上映された作品は注目度、期待度ともに高く、世界に向けた初披露の場となるわけです。
コンペ部門でグランプリ、作品賞、監督賞、俳優賞、審査員特別賞などの主要賞を受賞することができれば、お墨付きをもらえるわけで、作品の質が保証され、強力な宣伝ポイントとなり、興行価値も上がります。
映画祭とはそもそもなぜ開催されるようになったのでしょうか。国や地域によって事情は異なりますが、理由のひとつは、国の文化力をアピールするためで、公的機関が共催していることが多いです。
例えばカンヌ国際映画祭は、1930年代後半にファシスト政府の介入を受けて次第に政治色を強めたヴェネチア国際映画祭に対抗するため、フランス政府の援助を受けて開催されることになったと言われています。
また、新しい映画作家や作品に光を当てることで、新たなビジネスが生まれ、開催地域に経済効果をもたらすことも大きな理由でした。各映画祭について見てみましょう。
カンヌ国際映画祭
1946年にフランス政府が開催してから毎年5月にフランス南部のコート・ダジュール沿いの都市カンヌで開催されている(1948年、1950年は中止)、世界で最も有名な映画祭のひとつ。審査員を著名な映画人や文化人が務めることも特徴です。
国際映画見本市が併設され、ミラノ国際映画見本市、アメリカン・フィルム・マーケットと並んで世界三大マーケットのひとつでもあります。マーケットには例年数百社、数千人の映画製作者やバイヤー、俳優らが参加し、世界各国から集まる新作映画を売り込む場となっています。世界三大映画祭と世界三大マーケットが同時開催されるのはカンヌだけなので、世界中のマスメディアから毎回大きな注目を集めます。
日本映画では、パルムドール(最高賞)を衣笠貞之助(きぬがさていのすけ)監督『地獄門』(第7回)、黒澤明監督『影武者』(第33回)、今村昌平(いまむらしょうへい)監督『楢山節考(ならやまぶしこう)』(第36回)、『うなぎ』(第50回)、是枝裕和監督『万引き家族』(第71回)が受賞しています。
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