映画館の席は奪い合い 配給会社と興行会社の“静かなバトル”:『映画ビジネス』(2/3 ページ)
映画の公開時期や上映館数の調整は、動員数を左右する重要な戦略だ。大作は大規模公開が基本だが、インディーズ作品は口コミで評価を広げる前に打ち切られるリスクもある。
よく例えられるのは、コンビニの商品棚。人気のある商品は目立つ所に長期にわたって陳列されますが、売れない商品はすぐに棚から撤去されたり、目立たないところへ追いやられることと似ています。映画が“商品”として扱われるようなシステムについては、業界内や映画ファンの間でも賛否あります。
ゆえに作品にあった公開時期と館数をいかに確保するかが重要になってきます。より多くの来客が期待される時期、春休み、ゴールデンウイーク、夏休み、シルバーウイーク、冬休み、お正月など、各社はこの時期に大作、期待作をブッキングしようとします。
しかし、それだけ競合作品が集中するわけですから、館数確保とともに、観客の奪い合いが起こるわけです。各種データを平均すると、日本人が1年間に映画館で映画を鑑賞する本数は平均で1.2本から1.7本となっています。
もちろん年齢層などによって異なり、映画好きのヘビー層(月1本以上映画館で映画鑑賞する人)は年12本、ミドル層(2〜3カ月に1本程度映画館で映画鑑賞する人)は年5本、ライト層(年に1〜2本程度映画館で映画鑑賞する人)は年1.4本程度という調査数字もありますが、ヘビー層でも平均月1本と考えると、いかに映画館で鑑賞する優先順位の上位作品となれるかが重要となります。
であるならば、あえてかき入れ時期を避けて公開するという考えにもなりますが、この判断にまさに配給会社の戦略が問われるわけです。例えば、かき入れ時期でないので競合が少なく、通常ならば100館規模で公開の作品であるのに200館確保できたとします。
ヒットすればしてやったりですが、100館だったら各館満席状態であったのに、倍にしたことで劇場によっては空席が目立ち、それが作品の興行的印象を下げてしまう(当たっていないように見えてしまう)ことがあります。
逆に100館規模で公開すべき作品なのに、満席感を演出しようとして50館で公開したところ、案の定、各上映館から観客があふれてしまい、他の作品に流れたり、早急に拡大館を確保できずに興行機会の損失を生んだりすることもありますので、そこの見極めが配給会社の手腕、興行会社(映画館)との駆け引きとなります。
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