お手軽バーナー「あぶり師」がじわ売れ 縮む市場で“小さな火”が広がった、意外な理由:週末に「へえ」な話(1/4 ページ)
焼き目を手軽につけられる家庭用バーナー「あぶり師」が静かなヒットを記録している。売れ筋商品とは言いがたいジャンルで、なぜ販売に成功したのか。その意外な理由に迫る。
キャップとロックを外して、あとはボタンを押すだけ。火力はガスバーナーより弱いものの、炎が広がりにくく、まっすぐに出る――。ほぼライター感覚で使える「バーナーライター」がじわじわ話題になっているのだ。
「ん? バーナーライターってなに? 聞いたことないなあ」といった人も多いかもしれないが、商品名は「あぶり師」(希望小売価格:550円)。老舗ライターメーカーのライテック社(東京都台東区)が食材をピンポイントにあぶれる商品を開発したところ、43万個(2025年6月2日時点)も売れているのだ。
そもそも、なぜライターメーカーがこのような商品を開発したのか。大きな理由は、ライター市場の縮小にある。ご存じのように、喫煙者の数は右肩下がりに減っている。厚生労働省の「2023年国民健康・栄養調査」を見ると、喫煙率は15.7%で、この10年で4.4ポイント減少している。
紙巻タバコを吸っている人が減っているだけでなく、火が不要の過熱式タバコが普及したことで、ますますライター市場が落ち込んでいる。さらに、法規制が厳しくなって、人口も減少している。“三重苦”ともいえる環境で、ライテックはさまざまな手を打ってきた。
食品を輸入販売したり、スマートフォンのカバーをつくったり、ホテルを運営したり。さまざまな事業を展開するものの、ライター市場の縮小は、会社にとって大きな課題であった。
ライターを使わない人が増えていく中で、社長の廣田拓郎さんは「なんとかしなければいけない」と考えていた。ある日、テレビの情報番組を見ていたところ、調理シーンが気になった。ガスバーナー(カセットコンロとトーチバーナーがセットになったもの)を使ってスイーツをあぶっていたわけだが、「これを家庭でできないか」とひらめいたのだ。
レストランや寿司店で、料理人がガスバーナーを使って、食材の表面をサッとあぶる様子を見かけたことはないだろうか。寿司であればネタを焦がして、香ばしさを引き出す。
おなじみの方法ではあるが、家庭で同じことをするにはちょっとハードルが高い。ガスバーナーを使ったことがある人はイメージできるだろうが、先端から勢いよく火が出てくるので、家庭のキッチンで使うのはちょっと危険なのだ。
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