今や対面決済の半分が「タッチ」に――iD・QUICPayが撤退し、Visaが独走するワケ(1/5 ページ)
わずか4年で決済インフラは激変。Visaタッチ決済の爆発的成長が、日本独自のiD・QUICPayをのみ込み、国際標準が市場を制圧する――その舞台裏に迫る。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
わずか4年で決済の風景が一変した。東京オリンピックを契機に、世界標準であるタッチ決済をVisaが日本で強力に推進し始めてから、非接触決済手段は大きく切り替わった。Visaの対面決済におけるタッチ決済比率は13%から45%へ、そして2025年3月には52%へと急上昇している。発行カード数は1億5000万枚に達した。

Visaタッチ決済対応カードは2025年3月末で約1億5000万枚に達し、わずか6年で150倍近い成長を記録。特に2021年のiPhone対応開始以降の伸びが顕著で、対面決済における普及率は52%と過半数を突破した
その一方で、長らく日本の非接触決済を支えてきたiDやQUICPayからは、特にプラスチックカードで撤退が相次いでいる。SBI新生銀行グループの中堅クレジットカード・信販会社アプラス(大阪市)は、2024年7月末でプラスチックカードでのQUICPayサービスを完全終了。三井住友カードは2025年7月以降の新カードからiD機能を削除する方針を打ち出した。ゆうちょ銀行も新規発行でのiD搭載を順次終了している。

QUICPayは2025年で20周年を迎える。長年にわたり日本の非接触決済を支えてきた老舗ブランドだが、運営元のJCBは大々的な記念キャンペーンを展開する一方で、カード発行各社の戦略転換が相次ぐという皮肉な状況に置かれている

三井住友カードは2025年7月以降、更新・再発行するカードを「iD機能なし」で発行すると明記。紛失・盗難・不正利用による再発行も含めて全面的にiD機能をなくす方針で、業界大手の決断としては最も踏み込んだ内容となっている
Visaワールドワイド・ジャパンのシータン・キトニー社長は6月のメディアブリーフィングで「個人的には近い将来、日本で90%台後半を目指したい」と野心的な目標を語った。タッチ決済の爆発的普及と従来技術の退場が同時進行する中、日本の非接触決済インフラはどこに向かうのか。
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