今や対面決済の半分が「タッチ」に――iD・QUICPayが撤退し、Visaが独走するワケ(2/5 ページ)
わずか4年で決済インフラは激変。Visaタッチ決済の爆発的成長が、日本独自のiD・QUICPayをのみ込み、国際標準が市場を制圧する――その舞台裏に迫る。
爆発的成長を見せるタッチ決済
Visaタッチ決済の普及スピードは、業界関係者の予想を大幅に上回っている。キトニー社長は「これは前例のないペースでの採用だ」と語気を強める。
業種別の成長率がその勢いを物語る。2023年第2四半期と2025年の同時期を比較すると、コンビニエンスストアでの非接触決済は2.8倍、レストランでは5.5倍、ドラッグストアでは7.7倍、スーパーマーケットでは3.2倍へと伸びた。当初はコンビニなど小口決済を皮切りに普及が始まったが、徐々に高額決済にも浸透している。
従来のクレジットカード決済に比べて利便性の差は明らかだ。ICチップ読み取りによる決済は暗証番号の入力を求められることが多いが、タッチ決済ならそれもいらない。「センターと通信しています」といった待ち時間も必要ないため、圧倒的にスピーディである。キトニー社長は「非接触決済が消費者の日常に完全に定着したことが数値に現れている」と分析する。
タッチ決済の成長ポテンシャルが証明されたのが、Visaの大阪エリアプロモーションプロジェクトだろう。2024年4月の開始から8カ月で、地域限定の集中投資がいかに劇的な効果を生むかを実証した。
大阪でのアクティブカードは全国平均の103%を上回る109%の成長を記録し、モバイル決済に至っては167%と全国の146%を大幅に凌駕(りょうが)した。消費者の反応も上々だ。商業施設でのプロモーション参加を支援するVisaオファーズエクスチェンジの登録は、3月の25万件から5月には55万件へと倍増。複数キャンペーンに参加したカード会員は支出を17%増やし、月間で非接触取引を行うアカウントは300万を突破した。
大阪エリア振興プロジェクトでは、モバイルアクティブカードが167%まで成長し、全国平均の146%を大幅に上回った。この数値はタッチ決済のポテンシャルを示すと同時に、集中的なプロモーションによる普及加速効果を実証している
キトニー社長は「的を絞ったプロモーションが、消費者のシームレスな決済体験への渇望を呼び覚ました」と手応えを語る。プロジェクトは大阪市内から堺、泉佐野、岸和田、阪南など周辺地域にも拡大し、約140店舗が参加している。
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