「甘酸っぱい初恋」の象徴だったカルピスが、“甘いだけ”になりつつある理由:スピン経済の歩き方(5/8 ページ)
100年以上続く老舗ブランド「カルピス」に、ここ数年変化が起きている。以前の甘酸っぱさよりも、甘さに寄せている印象があるが、なぜだろうか。
「果物離れ」が進んでいる世代
厚生労働省のデータを見ると、1995年の1人1日当たりの果実摂取量は133グラムだった。それが2023年になると93グラムまで落ちてきている。つまり、オレンジやレモンという「甘酸っぱさ」が持ち味のかんきつ系フルーツも、30年前と比較して消費量が減っているということだ。
では、どの世代の人々が「果物離れ」をしているのか。データを見ると、10〜40代の落ち込みが激しい。これを聞いて、ピンとこないか。
この世代は最もコンビニやスーパーでシュークリームやらプリンやらというスイーツを買っている世代でもある。つまり、今の日本人の多くは、フルーツの「甘酸っぱさ」よりも、スーパーやコンビニのスイーツの「分かりやすい甘さ」を求めている人がかなり増えてきているということだ。
こういう時代の変化を踏まえれば、カルピスもブランド戦略を見直さなくてはいけないことは言うまでもない。最大の特徴である「甘酸っぱいおいしさ」は、必ずしもレモンのようなかんきつ系のものではなく、ましてや梅干しのようなものでもない。ただ、「分かりやすい甘さ」を好む消費者からすれば、「酸っぱさ」というところでは同類なのだ。
このマーケティング上の課題を、いかに現代的に乗り越えるか、と考えた結果が、シュークリームやプリンとのコラボだったのではないか。
生洋菓子を製造販売するモンテールが毎年発表している「スーパー・コンビニスイーツ白書2025」によれば、スーパーやコンビニで人気のスイーツは18年連続で「シュークリーム」と「プリン」がトップ2になっている。
つまり、人気者の甘さパワーに便乗して、消費者に「カルピスも皆さんが思っているよりも甘いんですよ」というイメージを訴求しようとしているのではないか。
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