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「甘酸っぱい初恋」の象徴だったカルピスが、“甘いだけ”になりつつある理由:スピン経済の歩き方(6/8 ページ)
100年以上続く老舗ブランド「カルピス」に、ここ数年変化が起きている。以前の甘酸っぱさよりも、甘さに寄せている印象があるが、なぜだろうか。
カルピス離れの「兆し」も
「いやいや、そんなの関係ないだろ。私はスイーツも大好きだけど、カルピスもよく飲んでいる。甘さアピールなんかしなくたって、これからも飲み続ける」という人もおられるだろうが、そういう人は「カルピスファン」なので、そもそもこのマーケティングの対象外だ。
もっといえば、この問題は、目先のファンよりも中長期的な「危機」の回避に重きが置かれている。今後も日本で「甘いもの」を好む人たちが増えていく中で、「カルピス=甘酸っぱい」イメージのままだと、「最近飲んでないけど、たまには買ってみようか」という「リピーター」が減ってしまう恐れがあるのだ。
その「兆し」も見えてきている。アサヒ飲料のファクトブック2024年を見ると、2019年の乳性飲料は4887万箱だったが、2024年は4245万箱と642万箱減少している。同じ時期の炭酸飲料と比較すると、1472万箱増えているにもかかわらず、だ。
もちろん、事業にはポートフォリオがあるので、「規模縮小=カルピス低迷」という単純な話でもない。ただ、月別の販売動向を見ると厳しいときがあるのも事実だ。
例えば、2024年8月のアサヒグループの販売動向を見ると、三ツ矢サイダー、カルピス、ワンダなど、6つのブランドはすべて前年比121%だった。
しかし、カルピスだけ前年比91%なのだ。
他にも6ブランドが総じて販売が振るわない月でも、カルピスはさらに低調だったこともある。何らかの「テコ入れ」が必要なのは間違いない。
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