「甘酸っぱい初恋」の象徴だったカルピスが、“甘いだけ”になりつつある理由:スピン経済の歩き方(7/8 ページ)
100年以上続く老舗ブランド「カルピス」に、ここ数年変化が起きている。以前の甘酸っぱさよりも、甘さに寄せている印象があるが、なぜだろうか。
老舗ブランドを「死」に追いやる人々
さて、こういう話を聞くと必ず「数字的には大変かもしれないが、安易に時代に迎合せず、100年前から続くあの味を守ってほしい」とか言い出す保守的な人がいる。
ただ、老舗企業や老舗ブランドを取材してきた立場で言わせていただくと、そうした部外者の声が、結果的にブランドを苦境に追いやることもある。
成長している老舗企業や老舗ブランドの経営者の中に、そういう保守的なことを言っている人は少ない。「伝統とは時代の変化に合わせて革新を続けること」という老舗企業ならではの戦い方を、経験に基づいて理解しているからだ。
そして、実はそれを体現してきたのが、経営危機を乗り越え、味の素やアサヒ飲料グループの傘下で100年事業を存続させてきたカルピスだ。
1908年、創業者・三島海雲が開発したカルピスは、原液を水などで薄めて飲むタイプの商品だ。これこそがカルピスの原点であり、魂と言っていい。当然、昔ながらのファンや顧客はこの原液カルピスを「未来永劫(えいごう)守ってほしい」と言う。しかし、その通りにやっていたら、とっくにカルピスは市場から姿を消していただろう。
原液カルピスだけで勝負して会社が傾いたことで、カルピスウォーター、カルピスソーダ、濃いめカルピス、カルピス THE RICHなど次々と新しい商品を開発していった。最近では、「睡眠の質改善」をうたう「PLUSカルピス 睡眠・腸活ケア」のほか、乳酸菌や腸内フローラがうつ症状と関係があるという研究が進んできたことで、機能性表示食品「メンタルサポート ココカラケア」なども発売している。
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