セブンの「安売り戦略」がローソンやファミマに勝てない、これだけの理由(3/4 ページ)
大好評だった、セブンの「おにぎり・寿司スーパーセール」。しかし、競合他社の施策との比較や、長期的な視点から考察すると、思わぬ課題が見えてきた……。
今回の「安売り」は本当に得策だったのか?
セブンの現在の目標が「客足を回復させること」であれば、確かに今回のセールは成功だっただろう。私の周りでも「久々にセブンに行ってみた」という人は多かった。
ただ、長期的に見てこのセールが得策だったのかと考えると、そうとも言い難い。なぜなら、消費者にとってのコンビニの価値が「安さ」なのかが疑わしいからだ。
流通アナリストの中井彰人氏が述べている通り、そもそも消費者にとっての「コンビニの価値」は、必ずしも「価格」だけではない。現に、スーパーに行けば、いまだに100円のおにぎりが売っている。コンビニの優位性とは「店舗数がたくさんあって、買い物時間を短縮できる」ことだ。スーパーに比べると、コンビニは家の近くにある場合が多く、買い物に行くための時間を節約できることが価値の1つになる。つまり、スーパーに行く時間を節約できたという「価値」に対して、コンビニにお金を払っているのだと中井氏は説明している。
そのため、コンビニの“安売り合戦”が、消費者にとって本当にメリットになっているのかは、慎重に見極める必要がある。少なくとも、「安さ」にこだわる層はスーパーなどに流れている可能性が高いからだ。
こうした理由から、セブンがローソンやファミマを目指して安売り路線に走るのは、長期的に見て正しい選択肢とは思えない。むしろ、一時的な安売りで単に客数を上げるより、顧客からの信頼回復や商品価値の向上に努めることの方が、より重要なのではないだろうか。
セブン-イレブン・ジャパンの阿久津知洋社長もこれを認めており、ここ数カ月の「安売り戦略」を振り返って、「安さをアピールし続けていくことは難しい」と述べている。その上で、「商品の価値を高めていく戦略も追求していく」としている。一時的な値下げでは、同社の抱える課題の抜本的な解決にならないことも認識しているようだ。
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