セブンの「安売り戦略」がローソンやファミマに勝てない、これだけの理由(4/4 ページ)
大好評だった、セブンの「おにぎり・寿司スーパーセール」。しかし、競合他社の施策との比較や、長期的な視点から考察すると、思わぬ課題が見えてきた……。
競合他社の「安売り」戦略は?
さらに私が疑問視しているのは、セブンの戦略が、単なる「安売り」にとどまっていることだ。
例えば、おにぎりの安売りセールでは、ファミマが興味深い施策を行っている。同店では、オリジナル電子マネー「ファミペイ」の会員プログラム「ファミマ メンバーズプログラム」を6月から拡充。この会員の最上位ランクである「アンバサダー」になると、おにぎり100円割引クーポン10枚を500円で買うことができる。
実際に行われていることは、セブンのおにぎり安売りセールと変わらない。ただ、ファミマの場合、ポイントの「会員ランク」にひも付け、ファンマーケティング的な要素を持たせている。また、「安売り」の施策は「ファミペイ」への導入のきっかけにもなり、ファミペイを用いた顧客データの詳細な把握にもつながっていく。これにより、単発の安売りで終わらず、今後のマーケティング施策としても利用していくという観点を持っているのだ。
こうしたマーケティングの要素も含んだファミマの施策と比べると、今回セブンが実施した「おにぎり・寿司スーパーセール」は、どこか「とりあえず安売りをしておこう」という姿勢が強く出すぎている気がしてならない。
本稿では、セブンの「おにぎり・寿司スーパーセール」をやや厳しい観点から見てきたが、セブンは今後は「安売り」だけに頼らず、商品開発にも力を入れていくとしている。セブンの商品への批判的な声が高まってきている今、この状況をいかに切り抜けていくのか。長期的な目線に立ったかじ取りが求められている。
著者プロフィール・谷頭和希(たにがしら かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
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