“赤字メニュー”も辞さず それでも収益を生むフランス料理の設計術:『レストランビジネス』(3/4 ページ)
レストランの原価管理の工夫から、長く愛される名店の共通点までを解説する。スペシャリテや空間演出、ブランド力など、繁盛店が実践する“続く店”の秘けつに迫る。
長く愛され続けている名店の共通点
飲食店はほかの業種と比べて廃業率が高く、経営していくのが容易ではありません。新規開業から1年で10〜30%、3年で50〜70%が廃業し、5年続くのは10〜15%、10年続くのは5%であると言われています。
一方、フランス料理の歴史が浅い日本において、40年以上続くレストランがあります。「ロオジエ」(1973年開店、以下同じ)、「銀座レカン」(1974年)、「マダム・トキ」(1978年)、「ラ・ロシェル」(1980年)、「レストランひらまつ 広尾」(1982年、前身は西麻布の「ひらまつ亭」)、「アピシウス」(1983年)、「トゥールダルジャン 東京」(1984年)、「シェ・イノ」(1984年)、「レストラン・パッション」(1984年)などが、そうです。長く愛され続けている名店には、次に挙げる4つの特徴があります。
(1)スペシャリテの存在
「ラ・ロシェル」の「ラングスティーヌ(赤座海老。日本では手長海老とも呼ばれています)料理」、「アピシウス」の「半生ステーキ ビトーク アピシウス風」、「トゥールダルジャン 東京」の「幼鴨料理」、「銀座レカン」と「シェ・イノ」の「仔羊のパイ包み焼き マリア・カラス」(井上旭氏が両店で提供)、「レストラン・パッション」の「カルカッソンヌ風カスレ」など、これぞというスペシャリテがあります。すべてのメニューがおいしいというだけでは、深く記憶に残りません。定番料理があると訴求力があり、人にも勧めやすくなります。一度はそのスペシャリテを食べてみたいと訪れるゲストも少なくありません。
(2)確立されたブランド力
「ラ・ロシェル」の坂井宏行氏や「レストランひらまつ 広尾」の平松宏之氏、「レストラン・パッション」のアンドレ・パッション氏は知名度が高く、カリスマ性があります。
フランスに本店を置く「トゥールダルジャン 東京」や、フレンチの黄金時代を支えてきた「銀座レカン」「アピシウス」「シェ・イノ」は、シェフが代替わりしても燦然と輝いており、一目置かれた存在となっています。シェフやレストランに宿ったブランド力が新しいゲストを引き寄せ、リピーターの来店を堅持しています。
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