値下げするコンビニ各社、“飽和問題”浮き彫りに…… 打開のカギは「小さな需要」:小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)
実質値下げで顧客をつなぎとめるコンビニ業界。背景にある家計のひっ迫、そして市場飽和の壁──。再成長の鍵は「小さな需要」にある。
コンビニを使う理由──時間と予算のバランス
そもそもの話だが、われわれはなぜコンビニを使うのだろうか?
例えば、昼食を手早く済ませたいとき、スーパーで買えばおにぎり100円以下、飲み物も80〜100円ほどで済むことを知っていながら、コンビニで150〜200円を払っていた。時間が限られ、用事もあり、早めに職場に戻る必要があったからだ。
買い物は「予算制約」と「時間制約」という2つの制約のもとで行われる。どちらかが限界を超えれば、選択肢を変えることになる。今の消費環境は、予算制約が限界に達した人々がコンビニを離れようとしている状況といえるだろう。
そこでコンビニ各社は消費者に寄り添う姿勢を示し、実質的値下げキャンペーンを張り、継続利用をお願いしている、ということになる。
「お願い」は効いている?
実際、こうした実質値下げキャンペーンによる“お願い”は奏功しているようで、大手3社の中でも、価格対応を先行させたローソン、ファミマは既存店売上をプラスで維持しているのに対して、対応が遅れたセブン-イレブンは2024年前半低迷し、キャンペーンを投入して少し持ち直した、という結果になった。
セブン-イレブンは「近くて便利」な最大の店舗網と高い商品力に定評があったこともあり、そのブランド力で乗り切れると考えたのかもしれない。しかし、実質賃金マイナスの影響は、予想以上に多くの人にダメージがあり、離脱する顧客数が予想を上回ったということであろう。
幸い、キャンペーン投下後は各社とも売り上げプラスを維持できているのだが、賃上げが追い付かない状況がさらに長期化するようであれば、離脱客はさらに大きくなる可能性もある。コンビニ各社はかなり神経をとがらせて動向をみているに違いない。
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