2015年7月27日以前の記事
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値下げするコンビニ各社、“飽和問題”浮き彫りに…… 打開のカギは「小さな需要」小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)

実質値下げで顧客をつなぎとめるコンビニ業界。背景にある家計のひっ迫、そして市場飽和の壁──。再成長の鍵は「小さな需要」にある。

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市場の飽和が浮き彫りにした「限界」

 こうした売上動向の背景には、消費環境の変化に加え、コンビニ市場の飽和という構造的課題もある。

 これまでにさまざまな商品、サービスを開発し、消費者の利便性向上に対応してきたコンビニは、社会インフラの一部といわれるほどの水準に達している。またその店舗は一定以上の人口がある場所のほとんどに配置されているような状態である。

 今のコンビニの店舗フォーマットで、新たに取り込める需要や出店場所が乏しくなっていることは否めないのだ。今回の消費環境の変化による売り上げへの下方圧力は、いわばコンビニ市場が飽和していることの裏返しだと感じている。

“小さな需要”を取り込む成長戦略

 とはいえ、これは業界の成長余地がなくなったという話ではない。コンビニのインフラを活用して、新たな需要を掘り起こす新業態を作り出せば、新たに出店余地を創出することは可能だ。

 最近、ローソンが地方で行っている実験をみると、一つの方向性が見えてくる。スーパーが閉店した跡地を狙って出店するという実験であるが、これこそ、人口減少、需要縮小を前提とした国内市場をフロンティアに変える可能性を秘めた実験である。

 ローソンは地方の過疎地で、スーパーが閉店した跡地にあえて出店して、地域住民の生活維持を支えるという実験を複数実施している。北海道厚真町、長野県阿南町、大分県大分市、和歌山県田辺市など、人口減少高齢化などで需要が縮小してスーパーが閉店してしまった場所でコンビニを開店し、地元の運営主体が加盟店となって、地域のライフラインを維持するために事業を維持していく。

 そこではスーパーの内食提供機能も求められるため、生鮮品についても原則取り扱いするよう、個々の事情に応じて生鮮売場機能を整えている。地元運営主体が個別に地元から仕入れたり、スーパーが加盟店となって生鮮品供給を担うケースもあるとのことだが、こうした対応ができるようになれば、コンビニは小さなスーパーとして新たな機能を持つことになる。

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