職人の年収が低い──沖縄の伝統工芸の課題に、社員100人のIT会社はどう挑んだ?(3/5 ページ)
沖縄の伝統工芸の1つ「琉球紅型」は、職人の年収が低いという課題を抱えていた。この課題に、社員100人のIT会社が取り組んだという。
職人たちからの反響も上々
紅型柄の活用実績は着実に積み上がっている。日本航空(JAL)のグループ企業で、那覇市に本社を置く日本トランスオーシャン航空(JTA)では、機内座席のヘッドレスカバーに採用し、2020年から定期的に新デザインに入れ替えている。2025年は化粧品メーカーのポーラがホテルのアメニティ用パッケージに使用した。これら以外にはコンソーシアムが主体となって商品開発をした事例もあるという。
10件の問い合わせがあれば、その内の3件がプロジェクト化まで着地するというから驚きだ。コンソーシアムの立ち上げ以来、職人が支払う会費以上のリターンを毎年度作れている。
問屋とのやりとりなど、昔ながらのやり方が主流だった紅型業界。デジタル技術を活用したコンソーシアムが走り出し、職人たちの受け止めはどうだったのか。36歳の若さで「紅型三大宗家」の一つである下儀保知念家の10代目を担い、コンソーシアムの理事に就いている知念冬馬さん(知念紅型研究所社長)はこう振り返る。
「私はもともとSNSで普及活動をしていたので『おもしろそうな取り組みだな』と感じましたが、高齢の職人さんにはなかなか運営方法を理解できない人も多かったです。それでも、コンソーシアムの屋冨祖幸子理事長(やふそ紅型工房代表)たちが、取り組みの主旨や、若い人を中心に新しいことを始めることに対して理解を示してくれました」
知念紅型研究所では、コンソーシアムが走り出して3年目に、以前と比べて売上高が1割ほど増加したという。「もともと着物や帯の染賃で回っていた工房でしたが、コンソーシアムができたことで、これまで関わることがなかった業種の方ともつながることができました」と話す。
デジタルの技術を有するokicomの社員がコンソーシアムに常駐していることにも心強さを感じているようだ。
「プラットフォームに載せる柄のスキャンデータは細かい色味調整などをする必要があるので、簡単ではありません。それを職人のプライド、こだわりを理解した上で作業してくれます。デジタルに強い部隊が裏で支えてくれているのはありがたいです」(知念氏)
現在、コンソーシアムが保有する柄のスキャンデータは全体で約1400点に上る。そのうち、必要な処理を終えた300〜400点はプラットフォームに掲載済みだという。
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