「寄せて上げて」はもう古い? ユニクロやファミマが変える“下着の常識”:ノンワイヤー革命(5/5 ページ)
かつて、「寄せて上げて」が主流だったブラジャー市場が様変わりしている。近年は、体を締めつけにくいノンワイヤーブラの人気が急上昇。バストラインをキレイに整えるワイヤーブラよりも売れているという。ヒット商品を販売するユニクロ、ワコール、トリンプ、ファミリーマートに取材した。
「第3のブラ」や服にもなる「ブラウェア」も
トリンプでは、「シルエット美」と「快適性」を両立する新戦略を打ち出した。ワイヤー、ノンワイヤーに続く第3の選択肢として、2025年3月に「ハイブリッド・ブラ」の提案を開始。同カテゴリーの新商品として3月に「秘めわざ」を、4月に通気性を向上させた「ブラCOOL」を発売した。
ハイブリッド・ブラには、一般的なワイヤーより柔らかい金属を、細く薄く成形した独自の“コンフォートワイヤー”を採用。体の動きに合わせてしなやかに曲がるため、締めつけ感を抑えて自然なリフトアップと美しいシルエットを実現するという。
「開発過程では、ワイヤーを柔らかくすることで、カップの形崩れやバストの横流れといった課題がありました。その一つひとつに対し、パターン設計・スタイル設計で丁寧に対応しています。サイズによって必要なサポート力が異なるため、ワイヤーの硬度も細かく調整。幾度もの試作や試着をへて、ワイヤレスのような着け心地と、ワイヤーブラのような美しいシルエットの両立にたどり着きました」(トリンプ マーケティング担当者)
発売後の反響は上々で、「秘めわざ」は発売2カ月で計画値の30%増を達成した。同社では、2013年から展開する着心地の良さを追求した「sloggi ZERO Feel(スロギー ゼロフィール)」シリーズも好調だ。扱うブラは全てノンワイヤーで、累計販売枚数は1200万枚を超えた(2025年3月末時点)。
ファミリーマートでは、人気のコンビニエンスウェアから下着としても服としても着られる「ブラウェア」を2025年3月に発売。6月末時点で3万9000個を販売し、20〜40代の幅広い女性が購入しているという。
「婦人インナー市場は紳士インナー市場の約2.5倍と大きく、新たなアパレルステージへの到達を目指してブラウェアを開発しました。『ファッション性』を高める狙いで、ストラップには“下着っぽく”見えやすいアジャスターを取り除き、カラーの異なる裏地を採用しました」(ファミリーマート CW・雑貨部 CW・コスメグループ 友定裕美氏)
ホールド感がありながら締めつけが少ない着心地を目指し、極力縫い目をなくして肌触りを良くした。夏にかけて需要が増すと予測しており、7月下旬に新色の発売を予定している。販売増を狙って、さらなる改良も模索しているそうだ。
各社ともノンワイヤーブラの需要がより高まると予想しており、製品の改良やラインアップ拡充を継続する方針だ。その背景には、TPOや気分、ライフステージによってブラジャーを“使い分ける”価値観の浸透がある。一度ラクなつけ心地を知ると、「もうワイヤーブラには戻れない」という人も少なくないようだ。
著者プロフィール:小林香織
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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