AIが「正解」を教えてくれるのに あえてチームメンバーの「関係性」に着目すべき理由(4/5 ページ)
皆さんは「チームでの会議が、イマイチうまく進まない」と悩んだことはないでしょうか。関係性を良い方向に育み、チームのパフォーマンスを高める手法として、昨今注目が高まっている「システムコーチング」という考え方と、それがチームの関係性やパフォーマンス向上にどのように貢献するのかをご紹介します。
AIが発達した今こそ、「関係性」に着目せよ
ここまでシステムコーチングの基本的な考え方をお話ししてきましたが、デザイナーとしてチームの関係性に着目するのには理由があります。
特にサービスデザインの考え方では、サービスを提供する側の作り手にもスポットを当て、作り手側が良い状態であることも重視します。サービスというのはそれを使うユーザーだけでなく、作り手側も含めた一種の「システム」のような存在だからです。
デザインプロジェクトの上流工程では、「ユーザーの課題は何か」「どんな価値を提供できるのか」「それをどう表現するのか」といった形のない曖昧(あいまい)なトピックを扱います。多様な意見を出し合い、建設的な批判を交わし、本質的な議論をするためにも、共感を通じて深いレベルで理解し合う「質の高い対話」が不可欠なのです。
デザイナーは人の感情や体験を深く洞察し、それを形にする専門家。チーム内の目に見えない感情の動きや関係性のダイナミクスにも敏感であり、それをより良くしていくことに関心を持つのが望ましい姿だと考えています。
また「関係性に着目する」という試みは、AIが発展している今だからこそ重要だと考えています。AI技術の進化は、私たちの働き方やチームの在り方を大きく変えつつあります。今後、定型業務や情報処理の多くをAIが担うようになる中で、個人のスキルや効率性は飛躍的に向上するでしょう。その一方で、人間にしかできない「協働」や「創造性」の価値がより一層重要になるのではないでしょうか。
AIがどれほど優れていても、人間の持つ複雑な感情や、そこから生まれる直感、人と人との間で織りなされる「関係性」そのものを理解し、創造することはまだ難しいはず。AIは優れたツールになり得ますが、チームとしての共感や、言葉にならないエッセンスレベルでの深い理解、そしてエッジを乗り越えるための人間的な葛藤と対話は、やはり人間である私たちにしかできない領域です。
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