再生ボタンを押したのは誰か? 昭和のカセット「マクセル」が登場した理由(4/4 ページ)
昭和100年の2025年、カセットテープ「UD-60A」が限定発売され即完売。ストリーミング全盛の時代に、あえて“スキマ”市場に挑んだ電響社の狙いとは──。
カセットテープが再注目される「3つ」の理由
マーケティング事業などを手掛けるナイル(東京都品川区)が実施した調査によると、Z世代(10〜20代)の67%が音楽配信サービスを利用している。そんな時代に、カセットテープが再注目される理由を池田さんは「3つある」と指摘する。
まずは、デジタル音源とは異なる温みのある「音質」が評価されており、アナログならではの音の味わいを求める声が多い。2つ目は「物質性」で、「ストリーミングと違い、物質として持てる点に価値がある」と池田さんは説明する。デジタル全盛だからこそ、手に取れる音楽メディアへの価値が再認識されている。
最後は、「体験性」にある。カセットテープは曲を飛ばすことができず、A面からB面への手動での切り替えも必要など、一見不便とも思える仕様が、デジタルネイティブ世代には新鮮に映っているようだ。
さらに、数量を限定した発売も可能なため所有欲を満たすコレクターアイテムとしての価値もある。加えて、昭和レトロブームの中で、見た目そのものがファッションの一部としても楽しまれるなど、昭和の時代とは違った価値が生まれている。
電響社によると、具体的な内容は明かされなかったが、今後もレトロ商品の展開を検討しているという。同社広報の阪下千恵さんも「カセット文化を盛り上げる気持ちで、新たな商品を次々に展開していきたい」と語る。
昭和レトロのアイテムを再評価する動きが続く中、「UD-60A」の販売はニッチな市場でも新たな需要が生まれる可能性を示した。デジタル全盛の時代だからこそ、アナログが持つ価値が輝くのかもしれない。
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