再生ボタンを押したのは誰か? 昭和のカセット「マクセル」が登場した理由(3/4 ページ)
昭和100年の2025年、カセットテープ「UD-60A」が限定発売され即完売。ストリーミング全盛の時代に、あえて“スキマ”市場に挑んだ電響社の狙いとは──。
想定を超えて広がった購入層
今回発売した「UD-60A」は、同シリーズの特徴である縦模様を再現した。「今の時代でも受けるデザインを考えた」(池田さん)
ただし、同社が目指したのは「復刻」ではなく、「オマージュ」だ。オマージュ製品の開発には課題も多く、最大の難しさは素材確保だった。技術進歩によって製造が容易になると思われがちだが、実際は簡単ではなかった。特にカセットテープは、需要とともに部材の調達(仕入れ)が厳しくなっているという。
こうした制約の中で、当時の雰囲気を再現することに苦労し、素材確保の難しさは数量限定発売の理由にもつながっている。
販売にあたっては、異なる世代へ同時にアプローチする戦略をとった。当時を知る世代には、UDシリーズで大切な曲を録音したという「懐かしさ」を訴求し、若年層には昭和レトロブームの流れで、古き良きデザインが持つ「新鮮さ」をアピールした。
また、カセットテープを入れるケースを厚型にすることで、取り出しやすさを高めるなど、現代向けに実用性も重視した。
ニッチな市場ではあるものの、想定以上の売れ行きを記録した。自社ECサイトでは、発売から数時間後に完売し、小売店での在庫も、(7月8日現在)店舗に残る分のみとなっている。ターゲット世代だけではなく、幅広い年齢層からの支持を集めたという。
さらに、「UD-60A」と同時期に発売したポータブルカセットプレーヤーの販売も好調に推移するなど、今回のカセットテープ発売が話題を呼び、関連機器の需要も押し上げた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜ「でっかいCDラジカセ」が売れているのか たまに止まる理由
ドウシシャの「でっかいCDラジカセ」を販売したところ、じわじわ売れている。1970〜80年代に流行ったラジカセをなぜ開発したのか。担当者を取材したところ、昔の思い出がたくさん詰まっていて……。
「年収700万円」の人が住んでいるところ データを分析して分かってきた
「年収700万円」ファミリーは、どんなところに住んでいるのでしょうか。データを分析してみました。
『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。
衰退するシャープは「日本そのもの」か “世界の亀山モデル”が失敗パターンにハマった理由
シャープが、テレビ向け大型液晶パネルの生産を2024年9月末で終了すると発表した。同社はまるで「世界の変化に対応できず」衰退していく「日本そのもの」のようだ。なぜかというと……。

