「34年ぶり」の大幅賃上げが、ゆくゆくは中小企業を苦しめるカラクリ:労働市場の今とミライ(2/3 ページ)
2025年の賃上げの最終結果が出た。1991年の5.66%以来、34年ぶりの賃上げ率となる一方で、注目すべきは、日本の労働者の7割が働く中小企業の結果だ。
拡大する年齢別賃金の格差
実は、これまで見てきた賃上げに関するデータは、中小企業の実態を表しているとはいえない面がある。政府の統計によると、労働組合のある企業はない企業よりも賃上げ率が高い傾向にあるからだ。日本商工会議所と東京商工会議所が6月4日に公表した「中小企業の賃金改定に関する調査」によると、調査対象企業のうち労働組合がある企業の割合は10.3%だった。
同調査によると、正社員の賃上げ額(月給)は加重平均で1万1074円、賃上げ率は4.03%。昨年比で0.41ポイントの増加となっているが、連合が発表した中小組合の平均賃上げ率4.65%よりも低い。また、20人以下の小規模企業では、賃上げ額(月給)は加重平均で9568円、賃上げ率は3.54%と昨年比で0.20ポイント増加したものの、小規模企業ほど低い賃上げとなっている。
賃上げ額・率を都市部(東京23区・政令指定都市)と地方(東京23区・政令指定都市)で見た場合、都市部の正社員の賃上げ額は加重平均で1万2857円、賃上げ率は4.37%、地方は同1万627円、同3.94%と格差がある。地方の小規模企業の場合は同9269円、同3.55%と、さらに低くなっている。
一方、パート・アルバイトなどの非正規社員の賃上げも進んだ。連合の最終集計結果によると、時給額の加重平均は66.98円(1219.70円)、賃上げ率は5.81%となり、前年を0.07ポイント上回っている。しかし、日本・東京商工会議所の調査によると、賃上げ額は46.5円、賃上げ率4.21%となり、連合の平均を下回っている。従業員20人以下の小規模企業の賃上げ率は3.30%と、昨年から0.58ポイント減となっているのが気になるところだ。
2025年のより正確な実態を知るには、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を待つしかない。ちなみに3月17日に公表された2024年の「賃金構造基本統計調査の概況」によると、企業規模別の賃金は大企業(1000人以上)は36万4500円(前年比5.3%増)、中企業(100〜999人)は32万3100円(同3.8%増)、小企業(10〜99人)は29万9300円(同1.8%増)だった。大企業に比べて中・小企業の増加率は低く、特に小企業は物価上昇率を下回っていることが分かる。また、大企業を100とした場合の賃金格差は中企業88.6、小企業82.1であり、前年(中企業90.0、小企業85.0)よりも賃金格差が拡大している。
注目したいのは、企業規模間の年齢階級別賃金格差の拡大だ。大企業を100とした場合、小企業の20代は90を維持しているのに対し、35〜39歳は80.3、40〜44歳は79.2、45〜49歳は78.6、50〜54歳は77.6、55〜59歳は73.5と、ミドル世代以降になると賃金格差が大きくなり、しかも前年より格差が拡大している。ちなみに大企業の55〜59歳は45万2600円だが、小企業は33万2800円。大企業の男性では51万4100円、小企業の男性は36万6200円と15万円程度の賃金差がある。
また、小企業の19歳までの対前年増加率は4.2%、20〜24歳3.3%、25〜29歳2.6%、30〜34歳3.6%であるのに対し、35歳以降は2.0%程度と低い。その背景には、人手不足による人材獲得競争が激化し、人件費原資を若年層に厚く配分し、ミドル世代以降の配分を抑制している傾向が推察される。
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