「トップの不正」にどう対応したのか 国産ドローン企業が実行した“情報戦”:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
国産ドローンメーカーとして注目される企業、ACSLで不祥事が発生。同社が活用したのが、企業インテリジェンスだ。徹底的な調査と迅速な対応により、ダメージを最小限に抑えた。情報を分析して活用する「インテリジェンス」がビジネスに不可欠になりつつある。
世界を読み解くニュース・サロン:
本連載は、国際情勢やビジネス動向を深掘り、グローバルな課題とそれが企業に与える影響を分析する。米中関係やテクノロジー業界の変動、地政学的リスクに焦点を当て、複雑な要素を多角的に捉えながら、現代社会の重要な問題を分析。読者にとって成功への洞察を提供していく。
近年、紛争地から産業の現場まで活用が進んでいるドローン。世界を見ると、中国製のドローンがかなりのシェアを占め、強い存在感を放っている。ただそんな中でも、国産ドローンメーカーとして注目されてきた企業がある。東京都江戸川区に本社を構える「ACSL」だ。
最近では、世界的な流れに乗って日本政府も経済安全保障に力を入れており、議論が活発になっている。日本国内でもハイテク技術において国産回帰を目指す動きが見られ、国産技術を強みとするACSLにとって追い風となっている。2024年には、同社の製品が防衛省航空自衛隊の空撮用ドローンに採用された。
そんなACSLを巡って最近、不正流用事件が表面化し、業界のみならず政府や防衛関係者の間で話題になっている。同社は、2022年に日本のドローンメーカーとして初めて米国に進出。2023年3月には日本で初めてレベル4対応(有人地帯の上空でドローンを目視なしに飛ばせること)の無人航空機の第一種型式認証書を国土交通省から取得している。そんな企業を巡る事件は「ライバル国による工作ではないか」などという物騒な声も聞かれた。
ところが、内部調査によって、いわゆるトップの「着服」事件であることが判明する。ドローン業界で日本を代表する企業に何が起きていたのか。
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